悪魔も喘ぐ夜
*
「どうなの、駆?
黙っていたら分からないわ」
「ご、合意か…なんてちょっと気が早くな
いかい?
だってほら、ただじゃれて遊んでいただ
けかもしれないし」
自分の息子達がそんなことをしていた…
なんて未だに信じられないという戸惑いが
前面に出て、日頃“物腰柔らかい”と言わ
れる父さんが気弱に見えてしまう。
「あなた、これはとても大事なことなの。
この子の人生がかかってることなのよ」
いつもは優しい母さんの声がピンと張り
つめている。
もうその声に、困惑や混乱はないように
聞こえた。
だから、俺も覚悟を決めるしかなかっ
た。
「…殴られたり、脅されたりしたのかって
言われたら…違う。
でも…兄貴は…時々、怖いことを言うか
ら…。
麗が何かされるくらいなら、俺が代わり
にって…」
心臓がバクバクと煩い。
喉が干上がる。
膝の上で握りしめている拳が嫌な汗をか
いた。
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