悪魔も喘ぐ夜
*
「従兄弟なんて会ったことない。
一体誰なんだ?
加我たちに何をした?!」
一気に警戒心が高まって体に緊張が走
る。
「傷つくわ〜っ。
まさかほんまに忘れてしもたん?
昨日も会ってんのになー」
そんなはずは、ない。
昨日は一日、隣のクラスの牧村とカラオ
ケに行っていた。
嘘は確定した。
だが、目的が解らない。
全然笑っていない目で大袈裟なジェスチ
ャーをする青年が、ずいっと顔を近づけて
きた。
青年は反射で上半身を逃がそうとした俺
の手首を掴んで強引に自分の方へと引き寄
せた。
顎を掴まれてキスでもされそうな距離ま
で顔が寄り、嫌でも視線をそらせなくなっ
てしまう。
「そないに冷たいこと言いなや。な?
仲ええのにそないなこと言われたら、俺
かてショックやわー」
目が、そらせない。
青年がつけているのか香水の匂いに包ま
れ、いつの間にか手首を掴んでいた手が腰
に回されてがっちりホールドされてしま
う。
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