悪魔も喘ぐ夜
*
「あっ!兄さんズルイ!!」
“ぼくもっ!”と身を乗り出しかける麗
の服の首根っこを掴んで兄貴が阻止した。
「こんな駆を見ても、まだ引き離そうなん
て馬鹿げた考え方をしますか?
親として」
「っ!」
兄貴の冷静過ぎる一言に母さんが反論で
きない。
「親なら、我が子の最善をいつだって追求
すべきでしょう。
簡単に決めつけて、切り捨ることなら他
人でもできますよ」
俺でも“ちょっと”と言いたくなるよう
な声の冷たさで、母さんがそんな兄貴を睨
んだ。
「…最善を、考えているから言ってるんじ
ゃないのっ。
駆だけじゃなくて、秀や麗だって母さん
たちの子供でしょ!?」
「では、他でもないその僕たちが駆と離れ
たくないと言っているのは無視なんです
か」
…隙が、ない。
見事に隙がない。
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