悪魔も喘ぐ夜
*
唇に噛みつくような痛みが走って再び意
識が浮上した。
危険を察知した体が一気に意識を呼び戻
し、瞼を開くと闇の中、月明かりに照らさ
れた銀髪が見えた。
兄…貴…?
いきなり意識が浮上しても、寝起き直後
の思考はやはり鈍い。
パジャマの襟元をずらされたと思った
ら、今度は首筋に痛みが走った。
“兄貴に噛みつかれた”そう気づいたの
は間もなくだった。
たまらず布団の中から手を出してその胸
を押し戻そうとするが、掌に力を込めるだ
け兄貴の顎にも力が入って余計に痛い思い
をしただけだった。
「ッぅ…!」
俺の覚醒を知ってもなお、思い知らせる
ように暫く噛みついたまま兄貴は動かなか
った。
さすがに肌が裂けて血が滲んでいるんじ
ゃないかと思う頃になってようやく兄貴は
顔を上げた。
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