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悪魔も喘ぐ夜
*


「だから母さんが戻ってくるまで下手に刺

 激したくない。

 クロードだって悪戯はしてくるけど、最

 後までは絶対にしないし。

 だから兄貴も麗も今まで通り、な?

 誰にも最後までさせないんだったらいい

 だろ?」

「いいよ。

 お兄ちゃんがそうしたいって言うなら、

 ぼくは我慢する」


 “ホントはいっぱいお兄ちゃんに触りた

いけどね?”と上目遣いで麗が見上げてく

る。

 それにどう返していいかわからずにいた

けれど、麗がそう言うことで兄貴が否と言

い出しにくくなったことは大きな収穫かも

しれない。


「それじゃ兄貴、おやすみ。

 麗、立てるか?」

「うん」


 まだ俺を睨んでいる兄貴は何か言いたげ

だったけど、いつまでも口を開かずにいる

兄貴を待っていたら麗の意識がもたない。

 腕にしがみついていた麗の腕が立ち上が

ってからも絡んでくる。

 麗はチラとだけ兄貴を振り返って兄貴と

無言のやりとりをしてから、2階の自室へ

促した。

 クロードの事も確かに問題なんだけど、

日に日に険悪になっていくこの二人の関係

も俺には頭痛がしてくるほど難題だった。





 そして多忙なクロードとは相変わらずす

れ違う様な生活が続き、たまに添い寝をせ

がんでくる麗をしょうがないなと受け入れ

る日々が続いた。

 麗は本当に常に眠そうで、ベッドに入っ

ても5分も意識が保てずにそのまま寝入っ

てしまう。

 そんな麗が俺に手を出してくる余裕があ

るわけもないのに、兄貴の前でもくっつい

て離れない麗の姿が兄貴の神経を逆撫です

るのか兄貴の刺さるような視線が日々研ぎ

澄まされていく。

 この兄貴の追及を逃れるのがなかなか困

難で、冗談でも“じゃあ兄貴にも添い寝し

ようか?”なんて言えない。

 口に乗せたが最後、腹ペコのライオンの

前に生肉を置くようなものだ。

 それでも下手を打てばクロードを刺激し

て事態が悪化しかねないと思うことが兄貴

にとって牽制になっているのか、なんだか

んだで最後までは至らずにいる。

 今のところは、だけども。

 少し前まで毎日のように夢精が続いて気

怠い朝を迎えていたのに、それもぱったり

と無くなって毎朝が清々しい。

 …つまりは何がいいたいかと言うと、切

望してやまなかった生活がようやっと手に

入ったということだ。

 悪戯されてしまうこと自体は妥協してと

いう現状だけど、それでも最後までされな

いというのは大きい。

 今までの吸われるだけ吸われまくるよう

な生活でなくなっただけ奇跡のようだ。

 勉強にも身が入るし、梅雨が明けてすぐ

夏休み前には中間テストもあるから今まで

できずにいた分の挽回もしなきゃならない。

 クロード抜きで加賀や高瀬達とも放課後

に寄り道できるほどの余裕もできたし、充

実していると言えた。

 …そう、表向きは。


「はぁ…」

「なんや、ごっつ久しぶりに顔見れたと思

 ったんに、なんで朝からそないに憂鬱な

 顔してるん?」


 隣の席で長い脚を組んでいるクロードに

溜息を聞かれてしまって答えに困る。





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AIイラスト投稿はうたたねパレッツ
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