悪魔も喘ぐ夜 * 「ヒック… じゃあ、お兄ちゃんが内緒にしてること ってなに?」 涙を拭いながら麗が俺を見上げてきた。 「それは…」 何も言わないのに気づいた麗に、気のせ いだと押し通すか、あるいは適当なことを 言って誤魔化すか…。 どちらにしても…と思う一方で、事実を ありのまま話すという選択肢はない。 「お兄ちゃん?」 麗の視線が答えを待っている。 麗を安心させる答えを。 「…いつか、ちゃんと話すから。 今はまだ…」 麗を抱きしめたまま、それだけ言うのが 精一杯の誠意だった。 [*前][次#] |