悪魔も喘ぐ夜
*
「“もう…”なんです?」
「もう離し、ぁうッ…!」
“離して”が言えなかった。
いつの間にかもう片方の手も下半身に伸
びていて、やんわりとだが少々強い力加減
で下の袋を握られ喉が引きつり、一瞬だが
背筋に冷たいものが走った。
「駆は僕の部屋でこんなことをする位なの
に、まだ素直になれないんですか?」
本当に離してほしいから言ったのに。
兄貴は何を言わせたいんだろう…。
そもそも兄貴は俺の素手で擦ってて嫌じ
ゃないの?
なんでこんなことしてるの?
なんで?どうして?
兄貴の考えていることが分からなくて、
何が「正解」かわからなくて、疑問だけが
浮かんでは消えていく。
兄貴の顔が見たい。
怒ってるのか、呆れてるのか、せめてそ
れだけでもわかれば何が「正解」かわかり
そうなのに。
でも恥ずかしくて振り向けない。
こんな顔見られたらもう兄貴と顔を合わ
せられない。
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