悪魔も喘ぐ夜 * しかし言い方がどうだというのを置いて みると、兄貴の言い分は“僕に気兼ねしな いで、4人で旅行を楽しんできて下さい” というふうになる。 兄貴の言い回しはいつだって天邪鬼だ。 そういう兄貴の言い回しにいちいちつっ かかっていた時期もあったけど、兄貴の根 はそこまで歪んでいないと気づいてから頭 の中で兄貴の言葉を変換する癖がついた。 あくまで受験生として静かに勉強したい というのも頭半分にはあるだろうが、必ず しもそれが理由の全てではないんじゃない だろうか。 自分の都合だけ考えていたら麗の名前は 出ない…と思う。 …そんな風に思ってしまうのは、兄貴の 弟を物心つく前からやってきたからだろう か。 でも今はもう一方で麗が考えていること も何となくわかる。 今までならただ純粋に家族と旅行に行き たくて、そこに兄貴や俺が欠けるのが嫌な んだろう…とそれだけだっただろう。 きっとその気持ちも嘘ではないだろうけ ど、兄貴と俺が二人きりになるのが嫌なん だろう。 正確には、二人きりにすることで自分一 人が置いていかれるような…そんな疎外感 がたまらなく嫌なんじゃないだろうか。 そんなことあるはずないのに…。 [*前][次#] |