悪魔も喘ぐ夜 * 「GW中も塾の講習があるので、僕は残念 ながら」 真っ先に母さんに返したのは兄貴だ。 「今回くらいは行けないかな?せっかくの 家族旅行だし、秀は成績いいから大丈夫 だよ」 「いえ。それほど甘くはないと思ってます から」 父さんはそれ以上兄貴には何も言わなか った。 代わりにこっちに視線を向ける。 「駆と麗はどうだい? 旅行、きっと楽しいよ」 「うーん…どうしようかな…」 「行こうよ、お兄ちゃん! きっと楽しいよっ」 麗が目をキラキラさせて腕にしがみつい てくる。 旅行には行きたい。 でも4人で旅行に行ってしまうと、GW 中に兄貴はこの家にたった一人だ。 静かな方が勉強ははかどるだろうけど… 寂しくならないだろうか。 チラリと視線をやるが黙々と朝食を口に 運ぶその顔にはどんな感情も出ていない。 「…なんですか?」 「いや、なんでも…」 視線に気づかれて慌てて首を振る。 [*前][次#] |