悪魔も喘ぐ夜
*
「お兄ちゃんが本当にぼくが好きで、兄さ
んが特別じゃないって言うなら、兄さん
と同じことをぼくがしても、許してくれ
るよね?」
この笑顔はどこかで見たことがある。
…あぁ、兄貴と同じだ。
兄貴と同じ顔で、笑ってる…。
「麗、でもそれは」
それでも食い下がろうとした。
手遅れだなんて思いたくなかった。
「ッ…!」
突起に鋭い痛みが走って顔がこわばる。
麗が突起に爪を立てていた。
「お兄ちゃん、僕は嘘つきは嫌いだよ。
お兄ちゃんは嘘つかないよね?」
初めて麗を怖いと思った。
いつも無邪気に笑ってくっついてくる麗
じゃない。
…悪夢ならそろそろ覚めてくれないか。
しかし夢と言うには意識があまりにもク
リアで、現実感がありすぎる。
…それならばもう、受け入れるしかない
のか。
麗が不安だ寂しいと言うなら、麗が俺を
欲しがるなら、俺が全部受け止めてやるし
かないのか…。
[*前][次#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!