悪魔も喘ぐ夜
*
青年は手を伸ばして俺を引き寄せた。
重さを失い、風船のように軽くなってい
る体はその手が導くままにその腕の中に収
まる。
青年の掌が素肌に触れた。
あぁ、俺は服を着ていないのか。
触られてようやく知る。
それでも不思議と嫌悪感も羞恥心も湧か
ない。
むしろそのサラサラの掌に触れられるの
は気持ちいい。
首筋、肩、胸、腹…青年が好き勝手に撫
で回すのを四肢を投げ出したままぼんやり
と享受した。
「んっ…」
やがて青年の掌が胸の突起を掠めた。
ピクッと体が跳ねて小さく声が漏れ、感
覚が少し鮮やかになる。
青年の唇が動く。
でも声は聞こえない。
しばらく唇が無音の中で動いていたけれ
ど、ようやく聞こえていないことに気づい
たのか口を閉ざした。
そして、何かを独り言のように呟いて…
その唇が笑む。
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