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悪魔も喘ぐ夜
*


 クロードはそんな俺に気づいているのか

いないのか、肌を伝った先走りの跡を丁寧

に舌で辿っている。


「駆は知らへんやろうけど、俺もう人間の

 精気吸ってへんねんで?

 駆の味を覚えてしまったらそこらへんの

 人間じゃもうあかんねん。

 サプリメントももう飽き飽きやし、責任

 とってんか?」


 カリッ


「あぁッ」


 袋の辺りを舐めながら言ったクロードに

皺ひとつないそこを甘く咬まれる。

 ビクッと腰が揺れて高ぶりが先走りを零

すとすかさず舌で舐めとられた。

 本当にクロードの匙加減は絶妙で、イケ

そうでイケない線をちゃんと心得ている。

 あと一歩のところでイクことのできない

身体は焦らすクロードの愛撫に耐えきれず

に“もう全部飲んでくれ”と懇願してしま

いそうだ。

 欲情にひきずられている体をそれでも繋

ぎ止めようとする理性には、やっと皆が納

得するように取り付けたあの約束を俺自身

が破れないというその一点しか残されてい

なかった。

 奥まで暴いて、突き上げて、抉ってほし

い。

 そうでなければしゃぶって、体の熱を一

滴残らず吸い上げて欲しい。

 こんな中途半端なまま、体の奥で燻る熱

を押さえつけながらクロードの言葉に首を

振り続けるなんて精神的に摩耗してしまう。


「クロード、もうっ…」

「ん?

 俺の恋人になる気になったん?」


 自信ありげに見上げてくる目が、その言

葉に頷くことを求めていた。

 そうすれば俺が望むだけ快楽を与えてや

ると甘い罠をチラつかせる。

 もう泣きたいような気持ちで唇を噛みし

めていると、空気を破るように電子音が鳴

り響く。

 鋭く舌打ちしたクロードが制服の内ポケ

ットから取り出したスマホの画面を見て忌

々しげに舌打ちする。

 通話ボタンを押すなり早口に異国語を捲

し立てたクロードは数回のやりとりの後、

苦虫を噛みしめた顔で通話終了ボタンを押

した。


「あかんわ。ほんまタイミング最悪やな」

「な、に…?」


 まさか。そんな。

 信じられない面持ちでクロードを見る。

 俺をこんな状況に追い込んでおきながら

クロードが行ってしまうなんて信じられな

い。

 指先を咥えこんでいた縁がその子供だま

しみたいな圧迫感を失って切なく萎む。

 しかしクロードの顔色は変わらず、返事

を求めて見つめる俺を口惜しいように見つ

めて苦笑いを浮かべる。


「俺の部屋で待ってて言うたら待っててく

 れる?」

「っ…」


 そんなの無理に決まっている。

 クロードに確実に最後までされると分か

っていてそれでも大人しく待っているよう

なら、今この時点でクロードを選んでしま

っているだろう。

 それはできない。

 まだ決めてしまえない。

 誰も選びたくないから。





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