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悪魔も喘ぐ夜
*


「それやったらどこならええ?

 俺はどこでもええよ?」


 ニヤニヤと意地悪く笑うクロードの目が

俺に問いかけてくる。

 俺に選ばせることで他の言い訳を先に塞

いでしまおうとするクロードの心の声が聞

こえる…ような気がする。


「授業中だしっ。

 そういうのはせめて昼休みとか」

「あかん。

 俺かていつ呼び出されるか分からんし。

 授業なんてカイルに任せとけばええねん。

 欠席にしなければええんやろ?」

「そういう問題じゃな、んっ」


 だんだんと音量の大きくなる俺の唇に指

先で触れて続く言葉を遮るクロード。

 そして俺の唇に指先をあてたままニッコ

リと微笑んだ。


「俺は今ここでしてもええと思ってるんや

 けど、駆はそれが嫌なんやろ?

 そやから場所は譲歩したるけど、そない

 にイヤイヤされるとチェックを受けたな

 い身体の事情があるんやないかなぁって

 勘ぐってしまうわ」

「べ、別にそんなんじゃないし…」


 本当に誰にも触らせてなんかない。

 ただ授業中に抜け出して身体チェックと

称したそんな過剰な悪戯を受けることが納

得できないだけで。


「恥ずかしいんやったら、そんなん気にし

 ていられんように俺の体液飲ませたろう

 か?」

「…っ!」


 カァッと熱が顔に上がってくる。

 “聞き分けへんようなら仕方ないやん”

とクロードは笑顔のまま凄いことを言って

るけど、とんでもないと首を振る。

 そんなものを飲まされたらきっとすぐに

果ててしまう。

 だがしかしクロードの中で身体チェック

をしないという選択肢がないのは明らかだ

った。

 自分でその場所を決めるなんて嫌な事こ

の上なかったが、どこでもいいと言えば今

すぐここでと言い出すのだろう。

 俺は出来うる限り記憶を引っ掻き回して

人のこない場所を探した。

 保健室…は、嫌な思い出しかない。

 またあんなことになったら嫌だし。

 特別教室…は、どこかのクラスが使って

るかもしれない。

 体育館も体育の授業で使ってるかも…。

 部室の暗室…は無理だな。

 鍵は部長か職員室にしかないだろう。

 そもそも匂いが籠りそうで嫌だ。

 それ以外で授業中に誰も訪れない場所っ

ていったら…。





「ええ天気やなぁ」

「……」


 自分で言い出した場所とはいえ、扉を開

けた瞬間から後悔していた。

 明るい青空の下でクロードが笑っている

けど、今から何をされるのか考えると憂鬱

でしかない。

 梅雨明けを迎え、じんわりと熱をもち始

めている日差しが肌を照らす。

 授業中に絶対に人が訪れず誰の目にも触

れない所…そう考えて思いついた場所は屋

上だった。


「あのさ、クロード。

 やっぱり別の場所に…」

「ええやん、ここで。

 それに俺やっていつ呼び出されるか分か

 らへんし時間勿体ないねん」


 …言い出したのは自分だけど、激しく後

悔している。

 クロードのわざとらしい笑顔が憎らしい

けど、本当に他に思いつかなかったんだ。

 誰にも見つからない場所が。





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