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悪魔も喘ぐ夜
*



 ダメだ。

 そういうこと考えるとますます落ち込

 む…。


 うっかり打ちのめされそうになって自分

を奮い立たせる。

 しかも気づいたら麗が腕にしがみついた

ままじっとこっちを見上げたままだった。

 どうやら麗も麗で静かに俺の答えを待っ

ているらしい。


「打開策がなかったらその時考える…じゃ

 ダメか?

 打開策が思い浮かぶほど俺もよくわかっ

 てない部分もあると思うし」


 さすがに麗の視線まで丸め込む気は起き

なくて頭を掻くと、麗は視線を伏せた。


「あの人がイギリスに帰ってくれるのが一

 番いいいよね。

 あの人に弱点ってないのかなぁ…」


 あの人ってクロードのことだよな?

 でもクロードの弱点なんて知ってどうす

るんだろう。

 まぁ俺もクロードの弱点なんて知らない

んだけど。


「クロードの弱点か…。

 それは俺も考えたことなかったなぁ」


 あのいつも自信満々で自分のペースで俺

を振すクロードに弱点なんてあっただろう

か。

 いや、ないわけはないと思うけれども。


「弱点は…わからないけど、でも何かイギ

 リスへ帰る理由があれば帰るんじゃない

 かな」

「一時帰国したとしてもすぐに戻ってこな

 いなんて確証はないでしょう。

 むしろ応援を連れて戻ってくることも充

 分に考えられます」

「でも母さんが帰ってくるまでは時間稼ぎ

 が必要でしょう?

 それで何か良案が浮かぶとは限らないか

 もしれないけど、少なくとも今後の方向

 性は見えてくるはずだよ」


 危惧を示す兄貴の声に答える麗の声は不

思議なくらい静かだ。

 静かすぎてやけに大人びて聞こえるほど

に。


「麗、何を考えてるんだ…?」


 つい何か不安にかられて麗の顔を覗き込

むと、顔を上げた麗の表情は歳相応に戻っ

ていた。


「うん…?

 ずっとお兄ちゃんにくっついていられれ

 ばいいけどそれは出来ないから、ちょっ

 とでも時間稼ぎできないかなぁって」


 その顔を見てなんとなくほっとしていま

う。

 なんだか自分でもよく分らないけど、麗

が俺の知っている麗じゃないような気がし

て不安になったのかもしれない。


「あの男が直接帰国するだけの理由となる

 と、会長である父親の業務命令や親族の

 危篤…ベタですがそんなところでしょう

 か。

 まぁ、そう都合よくそんな事態にはなら

 ないでしょうから考えるだけ無駄ですけ

 ど」

「そ、そうだよ。

 業務命令はともかく、親族の危篤なんて

 ないほうがいいに決まってるし」


 兄貴はあくまで可能性の話だと涼しい顔

をしているけれど、他人の不幸を願ってい

るようでとんでもないと首を振って同意す

る。

 そりゃクロードには根に持つようなこと

はされたけど、そんな不幸を願うようなこ

とはされていない。

 まして俺達だって母さんの安否は誰も知

らない。

 そんなことを願ったら母さんに何かあり

そうで怖い。





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