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悪魔も喘ぐ夜
*


 やはり納得できない事をただ知ったまま

で、誰もが納得できる打開策が見つかるま

で見逃してくれというのは無茶な願いだっ

たんだろうか。


 いや…うん、無理だな。

 兄貴の性格を考えれば。


 だがもしかしたら兄貴を納得させられる

んじゃないかと思った。

 納得できなくても見守ってくれないだろ

うかという淡い期待もあった。

 兄貴に言わせるとそれは“数千年先まで

保ちそうなほど砂糖漬けの思考回路”、ら

しいけど…。

 でもきっとそれ以上に、俺が兄貴とこれ

以上険悪なままでいたくなかった。

 同じ家の中にいて言葉すら交わさないよ

うな時間が耐えられなかった。

 兄貴と話せば何か打開策も浮かぶかも…

なんて期待もなかったわけじゃないけど、

それは望めなかったようだ。

 さて、どうしようか。

 とりあえず俺の考えを知っていて欲しか

っただけで、兄貴自身が納得するまで話を

終わらせられない…というところまでは考

えてなかった。

 その辺りの詰めの甘さも兄貴に知られた

ら詰られそうだけども。

 勢いだけで兄貴と話し合おうなんてやっ

ぱり軽率だったかもしれない。


「お兄ちゃん自身はどうしたいの?

 母さんが帰ってきて打開策がもし浮かば

 なかったらって考えたことある?」


 俺に凭れて寝ていたと思っていた麗が眠

そうな声で尋ねてくる。

 目を瞑っているから寝ているのかと思っ

たんだけど起きていたようだ。


「口を挟まないでくれますか。

 寝るならさっさとベッドへ行きなさい」

「嫌だよ。

 お兄ちゃんの話なら僕だって無関係じゃ

 ないんだから」


 兄貴の目が邪険に麗を追い払おうとする

が、麗は俺の腕に腕を絡ませてきて離れよ

うとはしなかった。

 兄貴と麗の間で交わされる視線が怖い。

 静電気よりも激しく湖面より静かな衝

撃が空気を揺るがすような気がする。

 俺に出来るのは話を戻すことだけだっ

た。


「打開策が浮かばなかったら、か…。

 考えたことはないけど…でも、大丈夫な

 んじゃないかな」


 俺が麗の問いに答えることで一応の収拾

はついたのか二人の無言の刃は息を潜める。


「どうして大丈夫だって思うの?」


 麗の問いかけはもっともなんだけど、ど

うしてと言われても俺の中に答えはない。

 ただ俺達に半分淫魔の血が流れているこ

となんて母さんは生まれる前から知ってい

たはずで、その母さんが俺達の将来につい

て何も考えていないとは思えないから、か

もしれない。


「母さんが何も考えてないはずないんじゃ

 ないかな。

 母さん自身だってもう実際の年齢と外見

 年齢は差があるっていうし、俺達だって

 今すぐ何かしなきゃいけないような事態

 でもないし…」

「話をすり替えるのはやめなさい。

 そんなこと今は誰も心配してませんから。

 僕や麗はともかく、駆がそんなことを気

 にしなければならないほど長生きできる

 確証はどこにもないんですよ。

 駆はそんな無駄な心配よりいかに自分の

 身を守るか考えなさい。

 その中身が詰まっているのか疑問な頭が

 どっぷり浸かりきっている能天気すらも

 敵なんですから」

「う゛っ…」


 バレてた。

 できるだけさりげなく方向転換しようと

思ったんだけど。

 しかもなんだか底抜けに馬鹿にされてい

るような気がする。

 確かに兄貴に言わせれば俺の考えること

なんて底の浅い考え無しのほうがマシ、な

のかもしれないけど。





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