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悪魔も喘ぐ夜
*


 トントントントン…


 ちょっとばかり慣れてきた手つきで夕食

を作っていると、眠そうな声に後ろから抱

き着かれた。


「お兄ちゃん…お帰りなさい…」


 ぎゅうっ。


「うん。ただいま、麗。

 もうちょっとで出来上がるから、ソファ

 で座って待っててくれ。

 ここにいると危ないから」

「んー…。お兄ちゃんが足りないんだもん。

 ちょっとだけー」


 ここ最近、麗は四六時中眠そうにしてい

る。

 夜は小学生もビックリな時間にベッドに

入ってしまうし、俺が帰ってくるまでの時

間もずっと部屋で眠っているらしい。

 こんなにずっと眠っているなんて何かの

病気なんじゃないかとか、学校で起きてい

られているのかとか心配になる。

 後ろから抱き着いてきて背中にぴったり

とくっついて頬擦りしている麗は、大丈夫

だからと言って聞かないけれども。


「あんなに寝ててまだ眠いなんてどこかお

 かしいんじゃないか?

 やっぱり一度病院に」

「心配しなくても大丈夫だよ。

 ぼくはお兄ちゃんにくっついてる方が元

 気になるもん」


 もう幾度繰り返したのかもわからない言

葉にかぶせるようにして遮った麗は、抱き

着いてきている腕に力を込めてきた。

 麗がそう言う以上は病院行きを無理強い

できない。

 母さんがいない今、俺が言って聞かなけ

ればのんびり屋な父さんととことん仲の悪

い兄貴では説得できないからだ。



「それに病院に行くよりもおにいちゃんが

 添い寝してくれたほうが、ぼくは元気に

 なるよ?」


 眠そうな声色ながらぴったりと体をくっ

つけながら、おねだりしてくる元気はある

らしい。

 ちゃっかりしてるなぁと感心したたもの

の、麗がそう言うなら添い寝くらいは…と

思ってしまう俺も麗には甘い自覚はある。


「添寝だけ、だぞ?」

「うん。ありがとう、お兄ちゃん」


 麗は嬉しそうな声を出して額を擦りつけ

てきた。

 それをくすぐったく思いながらも添い寝

なんて久しぶりだと記憶を辿る。

 いつも何か言いたげな顔をしていたと思

ったら今度は眠り姫のごとく寝始めてしま

ったから、麗が遠慮なく甘えてくるのは純

粋に嬉しい。

 兄貴と違って麗は添い寝だけと言ったら

本当に添い寝だけだから、クロードとの約

束も破ったことにはならないだろうし。


「さ、もう火使うから。

 ソファで座って待っててくれ」

「うん。後で一緒に洗い物しようね?」


 シャツ越しに触れたか触れなかったか程

度のキスを残して麗の体温が離れた。





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