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悪魔も喘ぐ夜
*


 クロードの悪戯は時も場所も選んでくれ

ない。

 入院中、利き手がうまく使えなかった時

は真昼間でも病室の個室から出なかったか

らまだマシだった。

 学校に出てくるようになってからがもっ

と酷くて、教室や保健室はおろか屋上や音

楽室でだって悪戯したくなったら躊躇して

くれない。

 昼休みだろうが授業の合間の短い休憩時

間だろうがおかまいなし。

 授業が自習になった時には教室を連れ出

されてチャイムが鳴るまで散々好き勝手さ

れて…。

 本当にクロードは病気で寝こんでいるく

らいがちょうどいいというか…俺にとって

は悪戯されなくて都合がいい。

 不謹慎だとはわかっているけど、絶好調

なクロードに付き合わされたらこちらの身

がもたない。


「もう1ゲームする体力がないんやったら

 カラオケにでも移動しよか」

「え゛っ!?」


 R1は総合スポーツ施設だがシャワール

ームやマッサージチェアもある休憩室の他

にカラオケルームやインターネット環境の

整っているパソコンルームもあって日がな

一日遊んでも悠々と時間を潰せてしまう。

 が、しかし。


「もうホント帰らないとヤバイんだって、

 俺。

 早く帰らないと心配かけるだろうしっ」

「ちょっとくらい遅くなったってかまへん

 やろ。

 俺以上に優先する用事なんてあるん?」


 自信満々に言ったクロードが顔を寄せて

きたと思ったら首筋を舐め上げられて、慌

てて掌をあてた。


「バッ…!なにしてんだよっ!?」

「味見。

 普通に運動して出た汗も甘いんかなって

 思ったけど、そうでもないなぁ。

 やっぱり“あの時”に出るんが最高に甘

 いわ」


 いくら二人きりとはいえ、人目のある場

所でじゃれつく内容にしては限度を超えて

いる。

 クロードはいざとなればあの能力を使え

ばいいと思っているのかもしれないけど、

巻き込まれている俺としては迷惑この上な

い。

 クロードが暗に言った言葉の裏を察しさ

っさと離れないと危険だと知る。

 このままここで、なんてありえないとは

思うけれど…。


「わっ、解ったからっ。

 とにかくシャワールームへ…っ」

「このままでもええよ、俺?」


 こっちは必死に体を逃がそうとしている

のに、クロードは不自然なくらい首筋に顔

を寄せてくる。


「…あぁ、甘くなってきた。

 こないな場所でドキドキしてるん?」

「っ…!」


 我慢していたけどもう限界で、クロード

を突き飛ばすような勢いで離れるとそのま

ま足早にシャワールームに向かった。





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あきゅろす。
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