悪魔も喘ぐ夜
*
「お帰りなさい、お兄ちゃんっ」
ぎゅうううっ
家に帰り着くなり、麗の熱烈なハグに迎
えられた。
「お兄ちゃん、今朝はどうしたの?
朝起きたらお兄ちゃんがいなくて、ぼく
すごく寂しかったんだよ?」
しょんぼり寂しそうな眼差しで見上げら
れると弱い。
兄貴を怒らせるのとは別の意味で心臓を
ギュッと掴まれたような心地になる。
「うん、ゴメン。
明日からはちゃんといるから」
「ホント?
なら良かった」
麗の表情が俄かに明るくなる。
そんな麗の頭を撫でてから部屋に向かお
うとするが、麗は離れる気がないのかべっ
たりひっついてくる。
どうやら今朝の一件がよほど堪えたのか
べったり甘えたモードらしい。
特に気にするでもなく部屋で制服から私
服に着替え、洗濯物を麗の分とまとめて洗
濯機に放り込んでスイッチを入れてからリ
ビングのソファーに腰を落ち着けた。
柔らかいソファーならば腰は幾分かマシ
で、こっそり安堵の息を吐く。
「お兄ちゃん。えへへへへ」
麗もようやく落ち着いたのか隣に座って
俺の腕にぴったりとしがみついた。
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