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悪魔も喘ぐ夜
*


「俺、ちゃんと言うたよな?

 駆が約束を破ったり、逃げ出したりした

 ら、何の保証もせぇへんよって」

「逃げ出しては、ない。

 ちょっかいも…出されそうだったけど、

 止めたし」


 クロードの声はまるで俺に刃を呑み込ま

せるような棘をもっている。

 でも、それでも退くわけにはいかなかっ

た。


「でもさっきやって、何処で誰と何をして

 るか言わへんかったやろ?」

「それは…そうだけど…。

 でも、ホントに何もしてない。

 病院に…兄貴を病院に連れて行ってただ

 けだから。

 でもそれを言ったら、クロードが機嫌悪

 くするんじゃないかと思って言えなかっ

 た」


 そこから重い沈黙が流れた。

 クロードは何か考え込んで黙り込み、俺

は俺で斬首台に上った囚人のような心地で

クロードの返事を待つしかなかった。


「……ほなら、証明できるん?」

「証明…?」


 ようやく沈黙を破って口を開いたと思っ

たら飛び出してきたのは意外な言葉だっ

た。


「せや。

 全身くまなくチェックしてどこにも痕が

 なかったら、今回だけは駆の言い分信じ

 たってもええよ」


 ぜ、全身って…っ。ここでか?!


「で、でも、誰か入ってくるかもしれない

 しっ」

「気にせんでも誰も入ってこおへんよ。

 人払いはさせてあるし」


 それも問題だけど、そういう問題でもな

いっ!


「言っただけじゃ、ダメなのか?

 信じて、くれない…?」


 病室とはいえ、真昼間からこんな明るい

部屋で俺だけ裸になるのかと思うだけで恥

ずかしい。


「そう言うたって逃げたやろ。

 そのくらいの誠意は見せてくれへんと、

 信じたくても信じられへんよ」


 しかし目を細めて言うクロードの目には

甘えは通用しないらしい。

 クロードはいつもおちゃらけているくせ

に、時々ふっとシビアな顔をする。

 そういう時のクロードには何を言っても

無駄だ。


「でもクロードだってちょっかい出さない

 って約束だろ…っ?」

「その約束をし直すためのチェックやない

 か。

 嫌ならええよ。

 無理強いして確かめようとは思ってへん

 から」


 そう言ってまるで興味ないもののように

クロードの視線がそれる。

 それが俺には選択肢はないのだと無言の

内に突きつけてきた。





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