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悪魔も喘ぐ夜
*


「駆、はようって言うたやないか。

 なんでそんな所で立ち話してるん」


 どうぞと中へ促した青年の向こうからク

ロードの声が飛んでくる。

 ベッドは部屋の奥のほうへ設置されてい

て、出入口からは見えない。

 しかし声で来たことが知れたらしく、ほ

んの少しの立ち話も許してくれない。

 仕方なく諦めて部屋に足を踏み入れ、そ

の個室の広さに驚いた。

 クロードが横たわっているベッドもやけ

に大きい。

 4人掛けのゆったりとしたソファーセッ

ト、薄型の大型テレビ、果てはユニットバ

スや簡易キッチン、小さな冷蔵庫までつい

ていてとても病室とは思えない部屋だっ

た。


 びょ、病室ってどこもこんなもんなの

か…?


 ドラマでよく見る大部屋の雰囲気とはだ

いぶ違うような気がする。

 しかしそんなものに驚いている場合じゃ

なかった。


「クロード、あの…体の具合どう?」

「いいわけあらへんやろ。

 悪いから入院してんねん」


 おそるおそる聞いてみたら、包帯の巻か

れた右腕を突き出された。

 あの時顔を庇った腕だ。

 もしかしたら、ガラスで切ったのかもし

れない。


「その…ごめん」


 白い包帯は痛々しくて、クロードの顔色

はさほど悪くないけど体にはしっかり傷痕

が残っているんだと思ったら胸が締め付け

られた。


「下がれ」

「はい。

 御用ができましたらお呼び下さい」


 謝る横でクロードがブロンドの青年に人

払いのジェスチャーをすると青年は優雅に

一礼して静かに部屋を出ていった。


「なんで逃げたん?」

「逃げたっていうか…そもそも帰るつもり

 だったし、勢いに押されて…。

 でもちゃんと説明できなかったのは俺が

 悪いから…ごめん」


 クロードが責めるなら謝り続けるしかな

い。

 どう頑張っても原因は俺にある。


「ショックやってんけど。

 しかも居場所は言わへんし、会いに来る

 のまで渋るし…」


 どうやらクロードの怒りの矛先は俺の落

ち度そのものじゃないらしい。

 俺がちゃんと兄貴や麗に事情を説明しな

かったせいで乱闘になったことじゃなく、

その間に逃げ出すようにして部屋を出てい

ったこととかその後の電話の対応がクロー

ドの神経を逆撫でしたらしい。





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