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悪魔も喘ぐ夜
*


 ち、違うっ!!

 兄貴の息がくすぐったかっただけ!

 それだけ!!


 もはや誰に何の言い訳をしているのかも

わからない状況で、囁かれた耳に手をあて

ながら上半身を反らして逃がした。


「こ…のバカ兄貴っ!」

「桐生さーん。桐生秀さーん」


 思わず声を張り上げてしまったところ

で、フロアに女性の看護師さんの声が響

く。

 名前を呼ばれて涼しい顔で診察室に向か

う兄貴は意地悪い笑みを残していき、一方

で残された俺は待合席の患者さん達の視線

を一斉に浴びてたじろぐ。

 さすがに居づらくなって逃げるような早

足でロビーの方へ向かった。


「はぁ…」


 ようやく視線の群れから解放されて一息

つき、ここまで来たついでに一応母さんに

連絡を入れておこうかと外に出た。

 電源を落としていた携帯を立ち上げる

と、センターで伝言を預かっていますと表

示された。


 留守番電話…誰だろう?


 麗はまだ学校のはずだし、母さんはこち

らからかけると言ってあるからかけてこな

いはずだ。

 操作して番号を見たら全然知らない番号

だった。

 今流行っている振り込め詐欺だろうかと

一瞬頭を過ったが、留守番電話を聞いてみ

るだけなら害はないかとセンターにコール

した。


『お預かりしている伝言は1件です』


 機械的な女性の声のアナウンスが響き、

ピーッという電子音の後に伝言が再生され

る。


『駆?俺や。

 なんで電源切ってるん?

 登校してないし、何回かけても繋がらへ

 んってどういうことなん?』


 独特のイントネーションだけで名乗らな

くても誰かは知れた。

 クロードもそう思っているから名乗らな

かったんだろう。

 しかし俺が登校してないってなんで知っ

ているんだろう。

 兄貴が重傷なだけでクロードは大したこ

となかったんだろうか?


『これ聞いたら何時でもええから即折り返

 して。

 はようかけてくれへんと…何するかわか

 らんで?』


 でもいつもの明るい口調ではないのは何

故なのかと気になったところでクロードの

声が1トーン下がった。

 脅し…に近い言葉を一方的に言った直後

にブツッと乱暴に通話が切られる。 





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