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悪魔も喘ぐ夜
*


「で、でもさ、そのうち飽きるよ。

 どんな高級料理だって食べ続ければいつ

 か飽きるっていうし」


 淫魔にとってフェロメニアが高級食材な

んだというのなら、いずれ飽きるだろう。

 どんなに美味しいカレーでも3食ずっと

1年食べ続けられる日本人はいない。

 …インド人にはいそうだけど。


「駆こそ脳の検査してきたらどうですか。

 きっとカビ生えてますよ」


 喩えが悪かったと反省している俺に兄貴

は呆れ顔で遠慮なく切り返してくる。

 病院に行けとしつこく言った俺へのあて

つけも含めてだと言うのがあからさまに伝

わってくる。


「そうですね…敢えて言うなら、ドラッグ

 のようなものです。

 甘い香りを放って惹きつける、中毒性の

 あるドラッグなんですよ。

 ハーフだから副作用が微々たるもので済

 んでいるだけです」


 初耳だ。

 副作用なんてあったのか。

 いつも一方的に吸われるだけだったから

考えたこともなかった。


「でも副作用が微々たるものだったら、そ

 もそもの効果だって薄いってことに…」

「じゃあいつも僕の前で泣きながらヨガっ

 ているのは駆の本心なんですか」

「なっ、なん…っ!?」


 午前中の明るい病院でなんてことを言い

出すのか。

 人に聞かれていないだろうとは思うけ

ど、それは確証があるわけじゃなくて、だ

からもし聞き耳でもたてられていたらきっ

とアウトな距離には他の患者がいる。

 そういう状況でサラッと言える兄貴の神

経はどうなっているのか。

 でも何か言い返してやろうと思った矢先

に兄貴の方が先に口を開く。


「駆が底抜けの馬鹿だから、解りやすい説

 明をしただけですよ。

 ハーフ同士でそれだけの効果があるのな

 ら、純血相手だったらどれだけ効果は強

 く出るんでしょうね」


 先回りして文句の出口を塞がれてしま

う。

 せめて不満を表情に押し出すが、兄貴の

どこか確信をもったような言葉にそれはあ

っけなく弱くなった。


「せめてこの厄介な体質がなきゃいいの

 に…」

「いつまでそんなくだらないことを気にし

 てるんですか。

 もう変えられないことをうじうじと考え

 るより、どうすれば自分の望む未来を引

 き寄せられるのかを考えたほうがよっぽ

 ど有意義です」


 昨日までの俺なら、兄貴がそんなことを

言えるのは結局は他人事だからだろうと心

のどこかでこっそりと思ったかもしれな

い。

 でも、今は…。





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