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悪魔も喘ぐ夜
*


「その無駄に長い寿命の何年か分で、この

 傷が癒えてくれればいいんですけどね」

「そんなこと…できたら、それこそ生きに

 くいだろ」


 言葉を絞り出す心地だった俺の空気をあ

っさり断ち切るような軽さで兄貴は溜息を

ついてみせる。

 思わずふっと笑ってしまって、あぁ気を

遣わせたのかなと心の隅で思う。

 兄貴にとってはただの皮肉だったのかも

しれない。

 でも一番気重になるのは兄貴のはずなの

に、なんで気を遣わせてるんだと思ったら

もう暗い顔はできなかった。


「で、でもさ、ないわけじゃないんだ。

 クロードなんて純血だろ?

 どうやって暮らしていけばいいかとか、

 せめて目処がつくまでお世話になったら

 どうかな?

 クロードも頼んだらきっと…」


 精一杯明るい話をしようとしたのに、兄

貴の表情が一変した。

 そのあまりにあまりな表情に、言いかけ

た言葉が尻すぼみになる。


「無駄ですよ。

 アレは手放すつもりなんて毛頭ありませ

 んから」


 いくら殴り合った相手とはいえ“アレ”

扱いはどうなんだろう…。

 しかし冷え冷えとした目の兄貴に口は挟

めなかった。


「駆を生贄にして得られる安息にどれほど

 の価値があるんですか。

 2人だってそんなこと言われたら反対し

 ますよ」

「生贄なんて、そんな…」


 でも遮るようにふっとクロードの声が耳

の奥に響く。


“どうせ他にアテなんてあらへんやろ。

 駆がちゃんと納得して俺の所に来られる

 までは何もせえへんよ。

 その足で俺の所に来てくれたら、もう離

 さへんし”


 そう言ったクロードの頭の中にあったの

が好意だけだなんて、さすがに俺だって思

わない。

 頼んで手助けだけしてもらおうなんてム

シが良すぎるんだろうか。






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