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悪魔も喘ぐ夜
*


「それで無謀にもノコノコ出ていって拉致

 されたわけですか」

「拉致っていうかなんていうか…。

 俺の体調が最悪で、その…鞄受け取るだ

 けだと思ったから」

「その馬鹿さ加減に吐き気がします」


 話を進めようとする兄貴の誤解を解こう

としたら、苛立つ声に一刀両断された。


 そんなにバカバカ言わなくたっていいの

に…。


 しかし反論できるのは心の中だけで、喉

元まで上がって来そうになる言葉をぐっと

押し戻した。

 冷え冷えとする兄貴の苛立ちが、何か一

言でも発したら即座に突き刺さってくるこ

とはわかっているから。


「だけど無理強いされたわけじゃなくて、

 変なことされたんでもなくて、俺がぶっ

 倒れただけだから…」


 それでもクロードが何かしらしたと思わ

れないようにそれだけは言っておきたかっ

た。

 故意に気絶させたりして連れ去られたわ

けじゃないということだけは。


「鴨がネギ背負って自分から飛び込んだわ

 けですか。

 そりゃそうなるでしょうね。

 そんなことも分からないくらい馬鹿な

 ら、もう一歩も外になんて出ない事で

 す」


 腕組みした兄貴の眉間の皺が濃い。

 吐き出しきれない苛立ちがその唇の奥で

渦を巻いていそうで、とても兄貴の目は直

視できない。


「だから、ごめんって。

 反省してる…」

「反省するフリなら猿にだってできます

 よ。

 まったく身についていないあたり、猿よ

 り学習能力がないんじゃないですか?」


 酷い言われ様だ。

 しかし、それでもぐっと堪えた。

 本題はもう少し先なのだから。


「それで…クロードと話したんだ。

 寿命の話」

「寿命?

 寿命ってあの寿命の話ですか?」


 兄貴もいきなり変な方向へ話題が飛んで

戸惑っているのか、念押しで確認してく

る。

 俺はそれに黙って頷いて、声のトーンを

落とした。


「ハーフの俺達は単純計算で200年生き

 るかもしれないって言われた。

 しかも50年先も100年先も、この姿

 のままかもしれないって」

「………」


 兄貴が完全に沈黙した。

 200年という時間を想像しているの

か、それともこの話そのものを疑っている

のかは分からない。





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