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悪魔も喘ぐ夜
*


 朝の冷気に包まれながら鞄をもっている

クロードに歩み寄る。

 なんとかいつものように歩きたかったけ

ど、重い体はいうことを聞かない。


「おはよう。なんや?体辛いん?」


 爽やかな笑みがいっそ憎らしい。

 その原因の一端は誰だと思っているのか

と説教したい。


「…鞄、返して」

「返してってとったんやないのに。

 忘れて帰ったんを届けにきたんやで?

 お礼も言わずにそれってあんまりなんち

 ゃう?」


 ムスっとした顔で手を伸ばすが、渡す気

がないのかクロードは苦笑いで肩を竦めて

いる。


「昨日あんなことされなかったら、こんな

 ことになってないっ!

 クロードがちゃんと反省して謝らないの

 が先じゃないかっ!」

「だって後悔してへんもん。

 それでも駆が謝らんと近づかんって言う

 なら謝ったってもええよ?」


 不遜の張り付いた笑みに思わず言葉を失

った。

 他人をどこまでバカにすれば気が済むの

か。


「もうっ、鞄返せっ!!」


 口をきくのも嫌でその手から鞄をひった

くるように奪い返そう…としたらひょいと

避けられた。

 動きの鈍い俺の体はとっさにそれに対処

しきれずバランスを崩してしまう。


「…なんや、朝からそないに甘い匂いプン

 プンさせて。

 昨日あれだけしたのに、まだ足りひんか

 ったん?」


 気づいたらクロードに抱きしめられてい

て、その鼻先が首筋を撫でた。

 吐息が首筋にかかると体が跳ね、ハッと

してその腕の中で暴れる。


「やだっ!離せっ!」

「かわええなぁ…。

 それで抵抗してるつもりなんや?」


 “つもり”と言われても今はこれが手一

杯だ。

 悔しくてギリッと奥歯を噛むと、片手で

ドアを開けたクロードは車内のシートの上

に俺のカバンを放り投げた。





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あきゅろす。
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