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悪魔も喘ぐ夜
*


 こんな体で…?

 でもあれがないと本当に困るし…っ。


 拳を握りしめてしばらく迷う。

 こんな体で出ていったら、それこそ攫っ

て下さいと言っているようなものじゃない

のか。

 身の安全と天秤にかけて鞄の中身の方が

大事だなんて答えはでない…けれど。

 もしあのまま居座られたら、どうなる?

 家族が起きて、会社や学校に行く時間ま

であそこで待たれたら…?


 クロードが手を出さない保証なんて、ど

こにもない。


 だったらせめて話ができる俺が出ていく

べきなのか?

 昨日言い足りなかった言葉の続きを言う

為にそこにいるんだとしたら、それを聞い

て帰ってもらう流れにできないだろうか。


 兄貴が聞いたら鼻で笑って問答無用で押

し倒されそうな考えが頭を過る。

 きっと兄貴なら言うだろう。

 そんな体で、妙な能力をもった相手に丸

腰で近づくなんて死にたいんですか?位の

ことは。

 それでも…それでも家族の安全が保障さ

れるなら、それは天秤になんかかけられな

い。

 クロードの目的は俺だ。

 だったら俺が何とかするしかない。


 窓とカーテンを閉めて、音をたてないよ

うにそっと部屋を出る。

 いつもの何倍もの時間をかけてようやく

玄関に辿り着くと体重をかけるようにして

その重い扉を押し開いた。

 クロードは先ほど見た場所にそのまま立

っていた。

 まるで出てくることなどわかりきってい

たように。





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あきゅろす。
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