悪魔も喘ぐ夜
*
「いや、だからそうじゃなくて…。
兄弟の好きから今言ってる好きに変わっ
たのはそのせいじゃないかって話で…」
「違うよ。
ちゃんと前から好きだったもん。
お兄ちゃんしかいないって思ってた」
それはそれで喜べないことのような気が
するんだけど…。
「お兄ちゃんは知らないだけだよ。
お兄ちゃんの腕がどれだけぼくを…ぼく
の心を救って支えてくれたのか…」
「え…?」
そんな大層なことをした覚えはない。
「お兄ちゃんがいなかったらぼく…兄さん
よりずっと前に壊れちゃってたもん…」
ぎゅっ
抱き着いてきている麗の腕の力が強くな
った。
しかし溜息を吐き出すようにして呟かれ
た言葉はそのまま素通りしてしまうには不
穏すぎた。
「麗…?いったい何の話を…」
しかし麗は答えない。
ただ俺の肩口に額を擦りつけて、気が済
んだのか肩から力を抜いた。
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