悪魔も喘ぐ夜 * 老婆の後ろをついていくと、赤い民族風 のテントに入って行く。 霧が立ちこめているせいでテントの中は 薄暗く、外から入る光はほとんど期待でき ない。 そんな中でゆらりと光が灯った。 老婆がロウソクに火をつけたようだ。 「お座り」 ロウソクを置いた小さなテーブルの手前 を指さしてから、自分はその反対側に回り 込み向かいに腰を下ろす。 こんなところまできて嫌とも言えず、俺 は言われるままその場所に腰を落ち着け た。 老婆の手がどこからかカードの束を取り 出す。 トランプ…にしては枚数が少ない。 同じ絵柄のそのカードをテーブルの上に 置いて広げ、全体を渦巻きの形で混ぜ合わ せる。 「回り続ける運命の輪。 巡り続ける星の軌道。 闇の中で惑う者に、 その道を示せ…」 しわがれた声が呪文のように唱えるのを 黙って聞いていた。 カード占いでそんな大層なことが分かる のだろうか…いや、夢の中のことだしそこ まで真剣に考えなくてもいいか。 [*前][次#] |