悪魔も喘ぐ夜 * 「おやおや死相が見えるよ…」 フードの下からしわがれた声が響いた。 ケタケタと笑う声は童話の中の魔女を彷 彿とさせて、その言葉の不気味さも相まっ て容易には声を出せない。 「このままだとお前、死ぬよ?」 その小柄な肩を揺らしながら嗤う様は見 ていても気持ちのいいものではなく、ムッ と顔をしかめた。 「おやおや、そんな顔しなさんな。 その死から逃れたくてこんなところまで 来たんだろうに。 おいで。占ってあげよう。 なぁに、とって食いはしないさ」 そう、なのだろうか…。 言われてみればそんな気がしなくもな い。 俺の返事を待たずに歩き出す背中を慌 てて追いかけた。 でないければ濃い霧のせいですぐに迷 ってしまいそうだ。 [*前][次#] |