悪魔も喘ぐ夜
*
「兄貴…麗…」
「お兄ちゃんだってぼくと一緒に居たいよ
ね!?
そうだよね!?」
そう、だけど…。でも…。
「でも…俺といると、兄貴も麗もおかしく
なるんだろ…。
俺一人がっ…居なくなれば、それで…っ」
“それで丸く収まるんだろう?”
声にできなかった。
涙が出そうで。
兄貴も、麗も、俺にどうにかできるなら
どうにかしてやりたかった。
でも二人がこれ以上堕ちるのを食い止め
たければ、排除しなければならなかったの
は、俺自身…。
兄貴が近づいてきた、と思ったら顎を上
へ引かれた。
え…?
驚いて流れかけていた涙がぴたりと止ま
った。
兄貴の顔がすごく近い。
唇に触れるのは柔らかくてあたたかい…
「…目は覚めましたか?
まったく…自分のこととなるとどうして
そう悲観的になるんですか。
駆が身を投げていいのは僕が相手の時だ
けですよ」
涼しい表情のまま、いつもの憎たらしい
視線のまま、兄貴は眼鏡の奥の目にぽかん
と動けずにいる俺を映す。
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