悪魔も喘ぐ夜
*
「さぁ、麗。朝ごはん食べましょう。
遅刻しちゃうから」
母さんに促され、それでもベッドの傍を
離れ難そうにギュッと俺の手を握った。
「ぼく、一番に帰ってくるからね。
お兄ちゃんはちゃんと寝てなきゃダメだ
からね」
「うん。わかってる」
握られていない方の手を伸ばしてなんと
か麗の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
えへ、と一瞬だけ嬉しそうに顔が緩んで
麗は俺の額にキスを落としダイニングへと
階段をおりていった。
「ゆっくり休むのよ。
後でおかゆ持ってくるわ」
「ありがとう、母さん」
優しい微笑みに嬉しいような申し訳ない
ような複雑な気分で、でもそれを表に出さ
ないようにいつも通りの笑顔を浮かべた。
母さんの手が髪を撫で、そのまま頬へ
滑っていき、額に親愛のキスをくれる。
子供の頃からの習慣にじんわりとあたた
かいものが胸に広がった。
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