悪魔も喘ぐ夜
*
受け身でいたって兄貴は理解できない。
でも兄貴の腕に引き込まれてしまえば、
一緒にまた堕ちるしかない。
一歩引いたところからではどうしても本
音を…本当の望みを聞かせてくれない兄貴
に、どうすればいいかなんて俺が聞きた
い。
そして兄貴がちゃんと前を向いてくれた
ら、麗だって普通に生活できるはずだ。
俺が兄貴にとられるとか…そんな不安が
なくなればきっと…。
「駆、一つ聞かせてくれるかい?
駆は現状に満足しているわけじゃない。
だとしたら、これからどうしていきた
い?
兄弟として、家族として」
「あなたっ…!」
「信じてあげようよ。
僕らの子供たちじゃないか。
駆はちゃんとみんなのことを考えられる
子だ。
だから今も苦しんでいる…僕にはそう見
えるよ」
父さんの穏やかな声に、涙が出そうにな
った。
戸惑っていても、まだ全ては受け入れら
れなくても、“信じているよ”そう言って
くれる。
母さんの溜息が聞こえた。
肩から力が抜けたようだ。
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