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悪魔も喘ぐ夜
*


「………」

「………」

「………」


 気まずい。

 非常に居たたまれない。


 子供の頃イタズラをして叱られる時にも

気まずかったが、あの比ではない。


 リビングのソファの上で身じろぎするの

も憚られて、ずっと自分の膝を見ている。

 午前中のうちに詰問されたらしい兄貴と

麗は自室にいて、目の前にはただひたすら

に黙って俺を見る両親。



 いつかはバレるんじゃないかと思ってい

た。

 こんなことはずっと続くはずがないと分

っていた。


 ある意味、最悪のタイミングでそれが明

らかになったのかもしれない。

 最中でなくてよかったなんて、不幸中の

幸いだとかポジティブに考えてみても現状

は打破できない。


「確認しておきたいの」


 不意に気まずい沈黙が破られて、思わず

肩が震えた。


「合意の上、だったの?」


 顔は上げられない。

 でもそう尋ねる母さんの声は、それだけ

では今どんな表情をしているのかは推し量

れない声音だった。


 合意…?合意、だったか…?


 YESかNOで即答できるほど簡単な問

題ではない。

 俺は兄貴との賭けに負けて、兄貴が麗を

傷つけるのも嫌で、でも現状としてはどう

しようもできなくて、だから…俺が兄貴の

相手をすればどうにかなるんじゃないかっ

て………だから、どうなんだろう?

 これって合意、なのか…?





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あきゅろす。
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