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悪魔も喘ぐ夜
*


 2階の自室に向かおうとして階段を上り

かけた兄貴がこちらを振り返った。


「僕だってそこまでするつもりはありませ

 んよ。

 昨夜のはただの“害虫避け”です。

 今夜は優しくしてあげますよ、駆が“い

 い子”にしているなら、ね」


 笑い声を残して、兄貴はそのまま二階へ

上がろうとする。


「お帰り、兄さん」


 キッチンのほうから出てきた麗が冷えた

ナイフでも向けるような声をかける。


「………」

「………」


 二人の鋭い視線が絡み合うこと数分…い

や、数十秒?

 おおよそ普通の兄弟間ではありえない無

言のやりとりに、見ている方が心臓に悪

い。

 視線を先にそらしたほうが負け、みたい

な空気だったのに不意に視線を外したのは

麗の方だった。


「お兄ちゃん」

「う、ん…?!」


 麗が背伸びをしたと思ったら唇に柔らか

いものが触れていた。

 俺が思わず固まって動けずにいると、麗

は唇を離してニコッと笑った。


「消毒、ね?

 さ、ご飯食べよう?」


 階段の上にいる兄貴が今どんな顔をして

いるかなんて恐ろしくて見れない。

 十分すぎる間をもって2階へ上がってい

くスリッパ音が響く。


 しっ…心臓に悪い…っ





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あきゅろす。
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