悪魔も喘ぐ夜
*
ゆっくりと踏みしめるようにして階段を
下りると、鍵の差し込まれる音がして外か
ら玄関のドアが開けられた。
兄貴が帰ってきた…。
あまりにもタイミングがよくて一瞬げん
なりした顔を見られたのか、帰ってきてす
ぐに兄貴は俺に不機嫌な視線をくれた。
「…ただいま。
GWだからってこんな時間まで寝ていた
んですか?」
…その原因の一端は誰のせいか、ちゃん
とわかってるのか?
シーツを無駄に強く握りしめながら心の
中で毒づく。
「お帰り…。
そんなわけないだろ。
兄貴がとんでもない置き土産をしてくれ
たから、その後始末」
…間接的な言い回しになるが、おおむね
間違ってはない。うん。
「嬉しかったでしょう?
僕の身代わりです」
ニッコリと笑う兄貴の顔が憎らしい。
グーパンチでその顔面を殴ってやりた
い。
…10倍返しの報復が怖いからやらない
けど。
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