悪魔も喘ぐ夜
*
中学に上がったばかりの弟 麗の姿が思い
浮かぶ。
お兄ちゃん、お兄ちゃんと後をついてく
るあどけない笑顔。
まだ何にも染まっていない無垢な弟。
その弟にまで知られたら…。
いやだ。考えたくない。
ひとつ確かなことがある。
事実がどうであれ、どんな理由があれ、
兄貴の目は…目の前の獣の目をした兄貴は
俺を許す気が、ない。
「兄貴、なんで…」
声が震えた。
目の前にいるのは俺が知っている兄貴じ
ゃない。
ごめんって言って許してくれない兄貴な
んて知らない。
意地が悪くても、性格が歪んでいても、
それでもちゃんと謝れば許してくれた。
「なんで?
駆が憎いから、嫌いだから、というわけ
ではありませんよ」
そう言うのに目が笑ってない。
いや、笑ってるけど、笑ってない。
それは俺が今まで知らなかった暗い…暗
い微笑。
…違う。怒ってるんじゃない。
兄貴は怒ってるんじゃなくて…。
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