[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜
*


 中学に上がったばかりの弟 麗の姿が思い

浮かぶ。

 お兄ちゃん、お兄ちゃんと後をついてく

るあどけない笑顔。

 まだ何にも染まっていない無垢な弟。

 その弟にまで知られたら…。

 いやだ。考えたくない。


 ひとつ確かなことがある。
 
 事実がどうであれ、どんな理由があれ、

兄貴の目は…目の前の獣の目をした兄貴は

俺を許す気が、ない。


「兄貴、なんで…」


 声が震えた。


 目の前にいるのは俺が知っている兄貴じ

ゃない。

 ごめんって言って許してくれない兄貴な

んて知らない。


 意地が悪くても、性格が歪んでいても、

それでもちゃんと謝れば許してくれた。


「なんで?

 駆が憎いから、嫌いだから、というわけ

 ではありませんよ」


 そう言うのに目が笑ってない。

 いや、笑ってるけど、笑ってない。

 それは俺が今まで知らなかった暗い…暗

い微笑。



 …違う。怒ってるんじゃない。

 兄貴は怒ってるんじゃなくて…。





[*前][次#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!