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悪魔も喘ぐ夜
*


「兄貴、もう終わったんじゃなかったのか

 よっ?!」


 そのまま奥の方まで飲み込もうとする兄

貴の額に手をあてて止めつつ懸命に腰を引

こうとする。

 兄貴は一度俺のを離して顔を上げた。

 その濡れた唇を赤い舌で舐めて口の端を

緩やかに上げる。

 意地悪くて、艶があって…今まで見たこ

とがない欲情した獣の目。


「“もう”?

 勘違いしないで下さい。

 それを決めるのは駆じゃありません。

 僕です」 


 その目で俺を射抜いたまま、ゆっくりと

立ち上がって動けずにいる俺の顎を掴んで

引き寄せた。

 もう少しで鼻先が触れあいそうな距離で

斜め上から見下ろされる。


 強者と弱者。

 支配者と従者。


 それを思い知らせるように。


 その表情には余裕が滲んでいる。


「“僕のいうことを聞いていい子にする”

 そう言いましたよね」

「言った、けどっ、それはこういう意味じ

 ゃっ…!」


 声を大きくして反論しようとする唇に人

差し指が触れた。


「駆に選択権はありませんよ?

 秘密を知られたくないのは誰ですか?」

「っ…!」


 そんなにいけないことだったのか。

 そんなに長い間責め続けられなければな

らないほどの罪だったのか。

 いつものように“ごめん”って言えば、

許してもらえることじゃなかったのか。


「駆が無断でこっそりあんなものを見てい

 たと知ったら…父さんや母さんや麗はど

 う思うでしょうね?」

「っ!」


 兄貴の目を見ていればわかる。

 クラスメイトがどうだからとか、そんな

理屈はもはや通用しない。





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あきゅろす。
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