悪魔も喘ぐ夜 * 「はいっ、もしもし!」 《あぁ、駆?お母さんよ。 さっき携帯にかけたんだけど繋がらなく て…。 何かあったの?》 「う、ううん。なんにも。 兄貴帰ってきたから、出迎えてて。 携帯、部屋に置きっぱなしだから」 せっかくの旅行だ。 心配はかけたくない。 《そう?ならいいのよ。 何か困ったことはある? もう高校生と中学生だし、大丈夫だとは 思うけど》 「うん、大丈夫。 何にも心配いらないから。 父さんと旅行楽しんできて」 《もう駆ったら…。 じゃあ二人によろしくね?》 電話口で母さんは照れたように笑った。 幸せそうに。 「うん。伝えとく。 父さんにもよろしく。 おやすみ、母さん」 《おやすみ。 火の元と鍵は忘れずにね》 そして通話は切れた。 受話器をそっと置く。 今夜は長くなるな…。 [*前][次#] |