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悪魔も喘ぐ夜
*


 兄貴の持っていたカバンが足元の床に落

ちるような音をどこか遠くに聞く。

 信じられない光景を前に動けずにいる俺

の顎を引き寄せ、ダメ押しとばかりに兄貴

の唇が重なる。

 こともあろうか舌まで入り込もうとした

のに気づいて、俺は兄貴に掴まれている方

の腕で兄貴の体を押して唇を引き剥がす。


「なっ、何すんだよっ!」

「そうですね。

 駆のイイ顔を見せてしまうのは勿体ない

 ですから」


 全然違うっ!


 プルルルルルッ!

 僅かな間を家の電話のコール音が破る。

 
 チャンスだ!!


「もうっ、兄貴はさっさと風呂入れ!!」


 こう着状態に陥りつつある二人に、そう

はさせまいと兄貴を風呂の方へと強引に押

しやる。

 兄貴は肩をすくめて見せたものの余裕を

滲ませて浴室へと消え、俺は家の電話に駆

け寄りながら残った麗にも声をかけた。


「麗も、もう寝ろ。

 兄貴の悪質な悪戯なんか気にするな」


 麗は返事をしなかった。

 俯くその表情は見えなかったが、2階へ

と上がる麗のチラっと見えた拳は白くなる

ほど握りしめられていた。

 それが気にならなかった訳じゃないが、

まずは電話だ。

 この時間に家の電話をかけてくるなら、

きっと旅行先の両親だろう。





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