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悪魔も喘ぐ夜
*


 麗はそんな俺の腕に自分の腕を絡めなが

ら兄貴に目を向ける。


「兄さんにはあげないよ」


 放たれたのは俺が知らない低く冷たい声

だった。

 麗の表情が、考えが読めない。


 そして兄貴も兄貴で、そんな麗を見て驚

くわけでもなく、むしろそんな麗を鼻で笑

って俺のもう片方の腕をとった。


「いつ駆が君のものになったんですか。

 初耳です。

 駆も戸惑っているようですし…。

 そういう大人げないことはみっともない

 ですよ?」

「兄さんこそ、無理強いしてお兄ちゃんを

 好き勝手するなんてどうなの?

 お兄ちゃんの気持ちなんてこれっぽっち

 も考えてないよね?」


 俺を挟んで火花が散る。


 ちょっと待ってくれ。

 二人がこんな喧嘩…


「駆、この子供に何をしたんですか?

 随分とでしゃばってきてますけど…。

 …まさか最後まで許したんですか?」

「変なこと言うなよっ!」


 兄貴の言い様に思わず噛みつく。

 麗はそこまで堕ちていないと言いたかっ

たのに、兄貴はむしろ愉悦の笑みを浮かべ

た。


「…わかりましたか?

 わかったら、さっさと子供は寝ることで

 す。

 ここから先は大人の時間ですから」


 笑みを浮かべる兄貴とは対照的に、麗は

視線で射殺したいように兄貴を睨みつけて

いる。


 こんなゾッとする麗の表情、俺は知らな

い…。





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あきゅろす。
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