悪魔も喘ぐ夜
*
「…お兄ちゃん、ぼくのことキライになっ
たの…?」
「そうじゃない。でもそういうのは」
玄関の鍵が外から開けられる音がする。
兄貴が塾の特別講習から帰ってきたよう
だ。
「そういうのはやっぱり兄弟ですることじ
ゃないよ」
傷ついた顔で見上げてくる麗を困ったよ
うな顔で見つめ返して頭をポンポンと撫で
た。
動かず何も言わない麗をとりあえずその
場に残し、玄関先まで行って帰ってきたば
かりの兄貴を出迎えた。
「お帰り、兄貴」
「ただいま…。
珍しいですね、先に寝ていると思ってい
ましたが」
いつも兄貴の魔の手から身を護っている
俺への嫌味らしい。
内心ちょっと毒づきたくなったが我慢す
る。
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