Beautiful actress ☆
(5)
目をさますとスザクの姿はもうなくて、一枚の置き手紙があるだけだった。
『先に行ってるね。』
その紙には一言だけしか書かれていない。
とても切なくなる…
でも自分の格好を見れば、自分は愛されていると思えてしまう。
昨日している最中に意識を失った筈なのに、自分はパジャマを着て寝ている。
スザクが気絶したルルーシュを風呂へ連れていき身体をキレイにしてパジャマを着せてくれたのだ。
喉が渇いた…
散々喘ぎ続けた彼の喉は、声が掠れてしまうほどボロボロだった。
水分を求めて立ち上がろうと床に足をつき、踏ん張ったが…
ガクッ
「うっ……」
ルルーシュは呻き声をあげて、床に崩れた。
立ち上がろうとした瞬間、腰を鈍痛が襲う。
ボロボロになっていたのは喉だけでは無かったらしい…
昨夜の情事の際に酷使され続けた身体は、悲鳴をあげていた…
今日も撮影があるのに…
ちゃんと演技ができるだろうか…
大事にしたい作品なのに…
歯を食い縛り立ち上がったルルーシュは、台所に行き冷蔵庫にあったミネラルウォーターを飲み干し、少し身体(主に腰)をマッサージしてから、スタジオに向かった。
「おはようございます…」
気だるい身体を叱咤し、ルルーシュは監督に挨拶をする。
「あぁ、おはようルルーシュ君。今日も頼むよ!あっそうだ、今日はジノ君も一緒に撮影だから、挨拶に行くといいよ!ルルーシュ君は一緒に撮影するシーンも無かったし、試写会で会ったくらいだろう?とても人柄の良い人だからきっと仲良くなれると思うよ。歳もちかいしな。」
ジノ。彼もこの作品の出演者だ。しかし彼は二期からの出演になっているため、ルルーシュとはほとんど面識がない。彼の役はスザクの友達かつ上司といった感じだ。
もう五話まできていたが、彼と一緒に撮影したことは一度もなかった。試写会の時もその後に他の仕事があるとのことで、すぐに帰ってしまっていたからだ。
よって今日がほぼ初対面になる。
「まぁあれだ!あっちが君に凄く会いたがっていてね。会いに行ってやってくれ。」
監督はそう言うとルルーシュに彼の楽屋の場所を教えた。
「わかりました…今から行ってみます。」
ルルーシュは監督に一礼し、スタジオを後にした。
「なぁ、スぅザクぅ!ルルーシュ君紹介してくれよ!」
ジノはスザクに背後から抱きつき、しつこくお願いする。
過剰なスキンシップは彼の癖のようだ。
「共演してるんだから、その内会えるだろ?今日だって一緒に撮るんだし。」
スザクは鬱陶しそうにジノの腕を払いのける。しかし顔は常に笑顔だ。
「冷たいなぁ…スザクは彼と仲いいんだろ?監督が言ってたぞ。撮影が終わってからよく2人で食事に行ってるって!俺もまぜてくれよ!」
拗ねたような表情で、もう一度スザクにすがりつく。
振りほどくのを諦めたのか、スザクはそのまま返答した。
「ルルーシュは人見知りだから、知らない人を連れていったら喋らなくなっちゃうよ。」
「だぁかぁら友達になりたいんだって♪」
ジノは嬉しそうにそう言った。
「大体どうしてそんなに仲良くなりたいの?」
怪訝そうにスザクが尋ねる。
「何でって…だって彼めちゃくちゃ美人じゃん!テレビでしかちゃんとは見たこと無いけど、睫毛とかそこらへんの女優さんよりながいよ!絶対仲良くなりたい!!」
やっぱりそういうことね。残念だけどルルーシュはもう僕のものだよ?
昨夜のルルーシュの恥態が目に浮かぶ。
普段の彼からは想像もできないような乱れた姿…
顔を涙で濡らし、求められるままに身体を差し出す。
投げ出された白く細い四肢。 快楽に表情を歪め、早くとねだった甘い声…
ヤバい……
興奮してきた…
「スザク?どうかしたか?」
黙りこんでニヤニヤしていたスザクにジノが不思議そうに声をかける。
「なんでもないよ!」
慌ててその場を取り繕い、爽やかな笑顔に作り替えた。
コンコンっ
そうこうしていると、ドアをノックする音が聞こえ、2人の視線が扉へと集中する。
「はぁぁい!」
元気よく返事をすると、ドアの方まで行き、ゆっくりと扉を開けた。
「おはようございます。主演のルルーシュ・ランペルージです。今日は宜しくお願いします。」
黒髪の青年は、挨拶をし、軽くお辞儀をした。
挨拶されたジノは、じっとルルーシュの方を見つめながら、呆然と立ち尽くしている。
何か変だっただろうか…
何も話さないジノの態度に一気に不安が込み上げる。
しかしそんな心配をよそに、彼は暫くして人懐っこい愛らしい笑顔を浮かべた。
「やっぱりテレビで見るよりずっと美人だ☆」
彼の第一声の真意が読み取れずルルーシュもまたじっとジノを見つめる。
「色白いんだね!君は今まで会った人の中で1番綺麗だよ♪」
浴びせられた口説き文句のようなセリフ、余りに急な出来事にルルーシュは紫水晶の瞳を瞬かせたのだった。
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