little garden ☆
〈3〉




「じゃあ…また明日…」


ルルーシュが別れの言葉を口にする。



「なんか…別れるのが名残惜しいな…」


スザクがボソッと呟いた。


「また明日会えるだろう?明日……スザクの家に泊まる……今日は…心の準備もあるから…」


「うん…そうなんだけど…明日まで待てなくて……」


「……スザク……」


手を握り、触れるだけのキスをしてスザクと別れた。







「ただいま…」


ルルーシュはスザクのことを考えながら帰路につき、家の扉を開ける。


ルルーシュの声を聞き、1人の少年が笑顔で出迎えた。



「兄さんっ!!お帰りなさい!!」


弟のロロ。ルルーシュは彼と一緒に住んでいる。この場所では珍しい2人兄弟。両親は自分達の種族の数が減っていることを案じ、お互いの子どもをのこした。もう天に召された両親は、とても愛し合っていたらしい。


「兄さん遅かったんだね。もうご飯食べてきたのかな?今日は僕の当番の日だったから、作ったんだけど。」


両親がいない俺達は家事を分担して生活している。



「いや、まだだ。」


「そっか!!じゃぁすぐ用意するね♪」


ロロは嬉しそうに台所の方へ向かう。今日は兄さんの好きな料理だよっと張り切って用意に取りかかろうとしている彼を、ルルーシュの言葉が引き止めた。



「ロロっ!!夕食の前に大事な話があるんだ…」


「どうしたの?改まって。」


台所からゆっくりとこちらへ歩いてくる。ロロは終始笑顔だった。大好きな兄が帰ってきて嬉しいという気持ちが、全身から伝わってくる。


ルルーシュの胸がズキっと痛んだ…



「聞いてくれ……ロロ………俺……スザクと一緒になることにした……」





「えっ?――――」






ロロの手が一瞬にして冷えてゆく。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、指先が震えた。



「今日…プロポーズされた………」


「………」



「俺も……俺もスザクを愛してるんだっ!!」



固まったまま動かない弟…
自分と同じ色をした双桙が潤んでゆく。


「……ロロ……」


本当は知っていた…目の前にいる少年の気持ちを…
でも見てみぬふりをしていたんだ…
スザクを愛してしまったから……
誰よりも…


「そ…うなんだ……」


必死に絞り出した言葉…



祝福しなきゃいけないんだ…



誰よりも大切な人。たった1人の兄。
大好きだった…
生まれてからずっと、僕には兄さんだけだった…
兄さんは僕の恋人で親がわりで…全てだった…


祝ってあげられる?
僕を選んで欲しかったのに…
僕と生きて欲しかったのに…


兄さん…………

僕と……





「……お…め…でとう…」


言えたっ………



「ありがとう……ごめんロロ……」


やっぱり知ってたんだね。僕の気持ちを…
あいつと出会ってから兄さんは僕と距離をとるようになった。
一緒に眠ってくれなくなった。
いつも一緒だったのに…


それでも気づきたくなかったんだ。兄さんが他の人を愛していることになんて。


きっとあきらめられないよ?
ううん、絶対に……



「おめでとう兄さん!!じゃぁ今日はお祝いだね……」



本当は立ってなんていられないくらい苦しかった…
淋しくて…大声で泣きたかった…
嫌だって、僕を選んでって言いたかった。





でも…兄さん困っちゃうよね。
兄さんに嫌われたくない…
だからイイ子になるよ。



「ご飯にしよう!!兄さんの好きなものばっかりだよ!!」


「あぁ……」


微笑むルルーシュ。

とても幸せそう…


大好き兄さん…
もっと笑って!!
もっと笑顔が見たい!!
大好き…大好き…愛してる…


もっと一緒にいたい…




楽しい時間は瞬く間に過ぎ、別れの時は刻々と近づく。




もし愛する人に愛してもらえなければ、その者は速やかに身を引くこと。それは掟…
なぜなら愛し合う者同士の間にしか子どもは生まれないから。選ばれなかった者は運命の人ではなかったのだと、納得するしかない。


種の保存のための鉄の掟…
破ることは決して許されない。



「明日…行くの?」


ロロが尋ねる。


「あぁ……」



「そっか…兄さんの子だ。きっとすごく綺麗な子が生まれるよ!!」


「ロロ……俺は……」

「ねぇ兄さん……一つだけワガママ言ってもいい?」


「いいよ……なに?」







「今日…僕と一緒に寝て…昔みたいに……同じ部屋で寝てくれればいいから!」



ささやかな願い…
それは最後の願いだった…


「分かった、一緒に寝よう。お前の部屋で。」


「ありがとう////」








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