お仕えします♪
【1】
「ルルーシュ、本当に一人で大丈夫?」
ルルーシュの母であるマリアンヌが心配そうに尋ねる。
「大丈夫だよ母さん。俺だってもう子どもじゃないんだし。」
黒髪の少年がゆったりと微笑んでみせた。
彼の名前はルルーシュ・ランペルージ。貴族である父シャルルと母マリアンヌの間に生まれた長子である。
父シャルルは仕事の都合で世界中を飛び回っていて、長い時は1年以上も家をあける事だってあった。
今回も急な転勤が決まり、約半年間中華連邦へ行くことが決まったらしい。
俺は学校のこともあるしな、ここブリタニアに残ることにした。
「お兄しゃま?お兄しゃまは一緒に来ないのですか?」
今にも泣き出しそうな妹がルルーシュの服の裾を引っ張りながら問いかける。
「ナナリー…兄さんはこっちでしなきゃいけないことが沢山あるから、お前と一緒にはいけないんだよ。ごめんな。」
可愛い妹のすがるような問いかけに切なくなる。
ナナリーは今年4歳になる俺の妹。
素直で、可愛くて、とても優しい俺の天使だ。
ナナリーに害を成す輩を闇に葬ってやる覚悟は何時でもできているっ!!
今回結構長い滞在になるから、ナナリーも母さんと共に父さんに着いて行くことになった。
最愛の妹と離れるのは俺も淋しい…
癒しを奪われた俺が発狂せずに半年間過ごせるのかは謎だ。
しかし、学校を半年間も空けるのはな…
俺は頭がいいから、学業の面は全く問題ないんだが、生徒会のメンバーに脅され…いや泣いてすがられてしまったから…
あいつらは俺がいないとてんで駄目だからしかたない。
「ごめんなしゃい…お兄しゃま…ナナリーワガママ言って…」
涙を堪えて、掴んでいた服を放す。
「ナナリーは悪くないんだよ?悪いのは兄さんだ。お前に淋しい想いをさせるなんて、俺は兄失格だよ!!」
「お兄しゃま;;,,」
泣きながらひしっとルルーシュに抱きつく。
「お兄しゃま大好き!!」
「ナナリー…俺も大好きだよ!!」
麗しき兄妹愛。
両親もヤレヤレといった顔でその成り行きをみていた。
「しかしなぁルルーシュ、いくらお前がしっかりしているからとはいえ、未成年を半年間も1人にするのはやはり心配だ。」
父が不安そうに話しかける。
「クスクスっ父さんも過保護だなぁ。」
抱き締めていた妹を母親にわたし、爽やかな笑みを携え振り返った。
「いや、そうなのかもしれないが…父さんはお前が心配なんだよ。家のこともしなくてはいけないし、負担がかかるんじゃないか?」
心配性の父はなかなか納得してはくれない。
「父さんも知ってるだろ?俺が家事得意なの。」
「あぁ、お前の作る料理は絶品だ!!母さんの味をしっかり受け継いでいる!!いいお嫁さんになれるぞ♪」
拳を握り力説する父。
「なら、心配いらないじゃないか。」
「でもなぁ……」
歯切れの悪い返事をする父は、筋金入りの過保護だ。そして何か思いついたように、手をポンと鳴らした。
「そうだ!お手伝いさんをつけようっ!」
やはりそうきたか…
俺としては、1人の時間をゆっくりと楽しみたいんだが…
こんな機会はもう無いだろうし…
両親はルルーシュのことを溺愛している。今回は特例でルルーシュのたっての希望により渋々彼を1人残すことにしたのだ。
「父さんの知り合いに有名な執事養成高校に通っている息子を持つ人がいるんだ!彼も実践ができて一石二鳥じゃないか!ルルーシュそうしよう。それがいい!!」
どうしても俺を1人にしたくないらしい…
まぁいい、お手伝いなんて所詮は空気だ。
害は無いだろう…
それに今回ばかりは父さんも譲らないし…
「父さんがそこまで言うなら、お手伝いを雇ってもいいかな…」
ルルーシュは渋々承諾する。
「そうか!じゃあ決まりだな♪早速先方に話をつけてくるぞっ!」
「待って父さん!!本当にその人で大丈夫なの?」
善は急げと部屋を飛び出そうとする父を慌てて呼び止める。
「なに言ってるんだ。お前も知っているだろう?あの名門校で知られる高校に通っているんだ、きっと好青年だよ!!」
「まぁ…そうか…ならいいんだけど…」
ルルーシュのその言葉を聞くと、シャルルは嬉々として電話のある部屋へ去って行った。
この後ルルーシュを待ち受ける惨劇を、彼はまだ知らないのだった…
家族の出発の日
「ルルーシュ元気でな!毎日連絡するんだぞっ!」
泣きべそをかきながら、父は目元をゴシゴシと擦っている。
「分かったよ父さん。」
ルルーシュは綺麗な笑顔を向けた。
ほわん―…
シャルルはルルーシュにメロメロだ…
「ルルーシュ、困ったことがあったらいつでも聞いてね。」
優しい母の言葉。
「ありがとう母さん。母さんも気をつけてね。向こうは治安悪いらしいし…」
「ありがとうルルーシュ。」
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