やっぱり愛しいスウィートハート(ルル誕)
君は世界一〇〇な人。
「く…るるぎ…くん…」
自分の席で頬杖をつきながらうとうとしていたところを彼の声に現実へと呼び戻される。こうやって誰かに起こされるのはもうこれで6回目だ。
というのも、今日という日を迎えることにとてつもないドキドキを感じているからで。
ほら、よくあるじゃん!遠足の前夜はわくわくして眠れなくなるみたいなさ。昨日はまさにそんな感じで全く眠れなかったのです。でも仕方ないよ、だってなんていっても今日はランペルージさんの誕生日なんだもん!
というわけで僕はこの教室内で今日1日を寝て過ごした。
「…きょ…う…おぼえて…る?」
遠慮がちに発せられる彼の声を耳にして、ねむねむでまだちゃんと働いていない頭を叱咤し、僕は無理矢理重い瞼を上げて覚醒を促す。
「もちろんだよぉ〜」
うつ伏せたまま顔だけを彼の方へ向けてニンマリと締まりのない緩みきった顔で微笑むと、彼も照れたように少し俯き嬉しそうにちょぴっとだけ笑った。
彼の頬が僅かに染まれば僕のそれはその倍ほど赤くなる。この胸の高鳴りをどうにかしてほしいくらいだ。反応が返ってくる度にこれじゃこの先僕の心臓が持たないよ。心の中で嬉しい溜め息をつきつつむくりと起き上がり、鞄の中に筆記用具を詰め込んで下校の準備を整えた。
えっ?教科書?
教科書は置き勉するから持って帰んない。どうせ家で勉強なんてしないしね。
「よし!帰ろっか!」
僕が勢いよく立ち上がるとランペルージさんもコクッと頷く。
全然関係ないんだけど、その鞄の持ち方はズルイと思う。何でそんな大切なものを抱き抱えているみたいなポーズなの?少女漫画の主人公みたいな…
もうダメだ生きる萌え要素。
踵を返してけてけと歩き出したランペルージさんの後ろに着いていく。そう、これからランペルージさんの家に向かうんだ。なんか一緒に同じ家へ帰るなんて同居している気分。
浮かれながら教室を出ようとしているとクラスの友達に呼び止められた。
「スザク、もう帰るのか?部活行かねぇの?」
「今日は自主休部!」
不思議そうに訪ねてくるクラスメイトに僕は満面の笑みで返す。
今日はランペルージさんの誕生日だから誕生日パーティーをするんだと教えてあげたら、おめでとうと言ってくれた。
それが嬉しかったらしくランペルージさんも笑顔でありがとうと返した。
僕以外の人に笑顔を見せたのは始めてのことで、ちょっと妬けちゃうけどそれ以上にクラスに馴染めていっていることがなんか嬉しかった。
「はぁ〜緊張するなぁ…」
学校の敷地内からでて大通りを歩きながら僕がそう言うと、ランペルージさんはピタリと足を止める。
「…くる…るぎくんが…くる…の……みんな…楽しみ……に…してる……おれ友だち…いない…から…みんな…心配…してて…でも…くるるぎくん…が……くるか…らみんな…喜んで…て」
僕が行きたくないって思っていると勘違いしたらしく、必死に説得されてしまった。そいじゃないよ、ドキドキワクワクするって意味。
「僕も楽しみだよ!ただランペルージさんのご家族に気に入ってもらえるかちょっと心配だっただけ。」
家族公認にならないとね!双子ちゃんにも気に入られればランペルージ家に入り浸れるかも…ってあれ?
ランペルージさん聞いてない?
「……」
安心させようとしたのに未だ不安そうな顔をしまま固まってしまっている。急になんの反応もなくなったので、顔を覗き込もうとするといきなり首をブンブンと振り始めた。
「えっ!?なに、どうしたの!?」
「…う…そ…」
ビックリして目をパチクリさせている僕を気にも止めず、続いて蚊の鳴くような声でそう呟く。
なっ何が嘘?
えっもしかして親は僕が来ること嫌がってるとか??
行く前から嫌われ者!?
心配で胸を一杯にしているとランペルージさんの口が徐に開かれた。
「……おれ…が…いち…ばん…きて…ほしか…た……」
「…っ!!!……」
目をうるうるさせながら叱られた後の子どものようにしょんぼりする姿はもう殺人的に可愛い。
僕は飛び出しそうになった心臓を慌てて押さえつけたのだった。
はぅぅ〜〜〜〜〜
もうダメです。。危なくキュン死にするところだったよ。
本当は自分が来てほしかったのに、家族が楽しみにしているって嘘をついたことを心に病んでるの?
そんな些細なことで怒ったりしないよ。むしろ嬉しすぎるよ!
何でだぁぁ、何でこんな無垢な生き物が存在するんだぁ!
同じ人間として生きていてすみません。僕なんてランペルージさんに比べたらアメーバだ。いや、腐った生ゴミ以下だよ!!
「き…ら…い…にな…た…?」
ならないよぉ;;
僕なんかいっつも邪なことばかり考えているのに…
なんかもう申し訳なくて、ほんともう土下座させて下さい…
「ランペルージさんがそんな風に思ってくれてるなんて、僕すっごく嬉しい!!」
「……ぁ……」
パァっと音がしそうなほど表情を明るくさせた彼は、小走りでまた家を目指す。
「……もう…すぐっ!……」
ランペルージさんはそう言って駆け出し、少し遅れをとった僕の手をとり引っ張った。
ちょっ!!!手っ!手手手手手手手ぇぇ!!!!!!
嬉々として走り出したランペルージさんとは打ってかわり、僕は繋がれた手に全神経を集中させて彼の手を感じる反面、その事実に小パニックになってしまい彼に着いていくことで必死だったんだ。
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