やっぱり愛しいスウィートハート(ルル誕)
もう一つだけ。




「今日はありがとうございました!」



「いいえ、こちらこそ。今日は来てくれてありがとう、また遊びに来てね。」


「はい!よろこんで!」



玄関まで送ってもらい、ランペルージ家の面々とお別れのときだ。
ランペルージさんを含めみんな本当によくしてくれた。最初はこのお家の大きさとかいろいろに戸惑いもしたけど、皆とても優しい人達ですごく居心地がよかった。この家がランペルージさんを生んだんだと思えばなんか納得。



「スザクさん、絶対またきて下さいね!」



「うん、ありがとうナナリーちゃん。」



「ちゃんだなんて。ナナリーって呼んで下さい!」



「…ぁっ…」



「いいの?」



「もちろんです!お兄様のお友達は私にとっても大切な人ですから。」



なんか僕に妹ができたみたいな気分だ。弟くんにも僕のこと気に入ってもらいたかったな…
それはまた後にお預けか…


一人っ子な僕は兄弟とかに憧れてたから、名前とかで呼ぶの悪い気はしない。というかすごく嬉しい。



でも、ランペルージさんの表情が一瞬曇ったように見えたのは気のせいだったかな?



「ランペルージさん、また明日ね。お邪魔しました!」



最後にランペルージさんにそう言って僕は扉の方へ歩き出す。
広い玄関を過ぎて扉の前へくると、僕が手をかける前に扉が独りでに開いた。
確かにこの家は豪華だったけど、自動ドアではなかった筈…




僕より先に扉を開けたのはランペルージさんだった。今の今まで玄関の上にいたのに、彼は急いで靴を履いてドアを開けてくれたのだ。
送り出してくれるのかと思ったけど、彼もまた外に出ようとしている。




「ランペルージさん?どうしたの?」



「…おく…って…いく…」


「えっ?」



う〜ん、確かに夜7時を回って外は真っ暗だろうけど、どちらかというと僕を送った後のランペルージさんの方が危ないような気が…

そういえば、12月に入ってから途端に日が短くなった。ちょっと前まではこの時間も明るかったのに。



「いいよ、帰り道ちゃんと覚えてるしって!ランペルージさん!?」



断ろうとしていた僕を無視してランペルージさんは僕より先に外へでてしまった。何時も結構そういうとこあるけど、一度思ったら突っ走るみたいな。
でも今日はいつも以上に周りが見えてない。というかテンションが高い?



「ふふ、ルルーシュ今日は嬉しそうだから、聞いてあげてスザクくん。」



「はっはぁ…」


「さぁナナリー、私達はお片付けよ!いらっしゃい!」


「は〜い!」


「あっロロも手伝ってねぇ!」



妹ちゃんは手をあげてはぁいと元気な返事をし、楽しそうにお母様について行った。でも何故か弟くんは僕の前で神妙な面持ちのまま立ち尽くしている。


「どっどうしたの?」


「枢木さん…」


「はい!」


「あなたのこと認めた訳じゃありませんから。」



その第一声に僕の胸はドキリとした。


「ただ……兄さんのあんな嬉しそうな顔…久しぶりに見たから…」


そういえばお兄ちゃんっ子なんだってランペルージさん言ってたっけ。しっかりしているように見えるけど、友達ができたこと本当は寂しいのかもしれない。




「…兄さんを傷付けるようなことしたら許しませんからね!」



「もちろんだよ!そんなこと絶対しない!」



これだけは約束できる!ランペルージさんが僕といて楽しいかまではわからないけど、僕はランペルージさんを守りたいんだ。



「なら早く行って下さい。兄さんが風邪引いたらどうするんですか!」



「うん、ありがとう!じゃあね!」



慌てて飛び出した僕は、玄関のすぐ前にいたランペルージさんと合流した。



でも、何となく気まずくて一言も話さないままいつの間にか敷地の外まで来てしまっていたんだ。



「ここまででいいよ!ランペルージさん薄着だし、風邪引いたら大変だから。」


「…で…でも…」



僕が別れを切り出すと彼はなぜか渋った。
僕も渋りたいところだけど、ランペルージさんに何かあったら大変だし。




「今日は本当に楽しかった、ありがとう!気をつけて帰ってね。」



そういうとランペルージさんは首をぶんぶん振って否定の意を表す。
ふふ、この姿も見慣れてきたな。



「…ん…ちがっ…おれ…が…うれし…かった……一番…うれ…しかった……でも…」



何かを言いかけて言葉に詰まってしまう。辺りが暗い上に俯いてしまったから、ランペルージさんの表情が読みとれない。


でも寒さで空気が澄んでいるせいか頭上では月と星が煌めいて、その灯が彼の気持ちをほんの少し教えてくれた。



何か心残りがあるって感じかな。
思ったことは全部僕に言ってほしい。少しずつ彼のこと分かってきたけど、やっぱり見落としてしまうことの方がまだ多いから。



「どうかした?」


僕は恐る恐るそう問いかけた。
でも、その問いかけに返された彼の答えはごく以外なものだった。



「誕生日…プレ…ゼント…もう…ひとつ…ほしい…」


「えっ?」



物欲とかあまり感じられないランペルージさんのこの台詞に、正直僕は驚いた。

そして次の台詞に僕はもっともっと驚くことになる。





「おれ…のこと…も……名前…でよんで…ほしい……」



「ランペルージ…さん…?」


遠慮がちなお願い。
それは小さなプレゼントで、僕にとってもプレゼントになり得るものだった。




少しの空白ができて、冷たい風が二人の間を吹き抜ける。けれど何故だろう全然寒くなくて、寧ろ温かくて…



「今日…いっかい…よんで…くれた…」



あっ、バレてたんだ…
歌をうたった時についそう読んじゃったの。




「すごく…うれしかった……だから…」




身体がプルプルと震えているのは、寒さのせいなのか、緊張のせいなのか…



どちらにせよ、彼の瞳はキラキラと輝いていた。


「いいの?」


僕が聞き返すと今度は首を縦にぶんぶん振って、その後期待に胸を膨らませる少女のような顔をした。



可愛いな、もう…



「じゃぁ…お言葉に甘えてそう呼ばせてもらおうかな。その代わり、僕のこともスザクって読んでね?」




彼はまた首を縦に振る。
まだかまだかと僕の言葉を待って、ランペルージさんの喉がコクってなるのがよく分かった。



「えっと…なんか恥ずかしいな、へへっ。……その…今日はとっても楽しかった、ありがとう……ル、ルーシュ…」



改まって名前を呼ぶのは想像以上に照れ臭くて、僕は暫く前を見られずにいたけれど、落ち着いてやっとのことで顔をあげた僕の前には溢れそうなほどの笑顔を携えたランペルージさんの姿があったんだ。









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