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01:ケンカをした
ツナザン同盟30題に参加しました


「俺は悪くない!」
「俺だって悪くねぇよ。」

目の前で腕を組み、お互いが背中を向けている子供と、子供のような大人の様子を見て、彼らの部下であるスクアーロは呆れたような溜息を吐いた。


1:喧嘩をした。


「……で、何が原因だぁ?」
自室に戻り外を眺めるザンザスに、スクアーロは問い掛ける。
取っといたプリンでも食われたかぁ?と茶化そうとも思ったが、不機嫌なザンザスにそんな事を言ったら鼻からプリンを飲まされるに違いないと言葉を飲み込んだ。
ギロリと紅い大きな目で睨まれ、先程の言葉を飲み込んで正解だったと心底安堵してザンザスの言葉を待つ。

「俺は悪くねぇ。」

ただ一言、それだけを呟いてザンザスは視線を戻す。
それは、はるか遠くだが、彼の居る場所へ向いた目線。

ザンザスは分かっている、悪いのは自分だと。


きっかけは些細な事。


暫定ボンゴレ十代目と言えども綱吉はまだ学生。
色々な学校行事の準備に追われ、予習復習も溜まり、二人が会う機会がめっきり減った。
寂しいとか、会いたいとかだなんて口に出せる訳もなく、ザンザスのフラストレーションは綱吉の宿題と同じぐらいに貯まっていく。
爆発寸前の恋しさに綱吉の元へ行けば、自分に見向きもせず一人机に向かって黙々とシャーペンを走らせる姿。
一緒に居たいという気持ちを隠し、教えてやろうか?と声を掛けると、いらないと言われた。
綱吉からすれば、そんな事でザンザスの手を煩わせる訳にはいかない、早く終わらせて一緒にのんびりしたいんだ。という意味で言ったようなのだが、思いの外キッパリと出た否定の言葉にザンザスの機嫌が一気に悪くなる。
「俺はいらねぇか?」
「今はね。」
何度かそんな問い掛けをしてみるが、勉強が溜まりイラついているのか素っ気ない返事しか返してこない綱吉。

それにザンザスがキレて、綱吉の机を割ったのだ。


喧嘩の原因は明らかに自分。

でもザンザスは謝ろうとしなかった。
どう謝ればいいのか分からなかった。
ただ一言「ごめん」と言えばいいのに、素直になれない自分に唇を噛む。



それから何日も、ザンザスは綱吉と口もきかず、綱吉はザンザスを避ける日が続いた。



廊下ですれ違っても
会議で顔を合わせても
自分に対して普段のように笑いかけてくれない。

「ツナヨシ…。」

遠く見える背中に向かって呟いても
誰も居ない部屋で名前を呟いても
返ってくる返事はない。

眠れない。
無性に喉が渇く。
自分は何に餓えているのか…
その答えも分からずザンザスはキッチンへと足を運ぶ。
眠れない夜は何か温かいものを飲んだ方がいいよ、と以前綱吉に言われた事を思い出したのだろう。


「…………あ。」
「あ゛……?」

キッチンには明かりが灯っており、不審に思い身構えて進むと、一番会いたくて仕方なくて、会いたくなくて仕方なかった子供がいた。
手にはほこほこと湯気を出す…リゾットだろうか?

「何、してる?」
「お腹空いたから…おかゆ作ったんだけど、そっちこそ…何してんの…?」
いきなり現れた存在から目をそらせず、おかゆと呼ばれたリゾットのようなものをスプーンからボタボタと皿の上に零している綱吉に、ザンザスは喉が渇いた、と一言だけ呟いて棚を開ける。



違う、話したかったのはこんな事じゃない。



棚を見回して手に取ったコーヒー豆の瓶が空で、ザンザスは更に眉を潜めた。
空き瓶を置くんじゃねぇよ、という気持ちを込めて舌打ちをする。

「…どうしたの、ザンザス?」
その舌打ちに、自分が何か気に障るような事をしたのかと綱吉が彼の名前を呼んだ。
遠慮がちだったが、求め続けていた声で名前を呼ばれて、ザンザスは思わず空き瓶を持ったまま振り返る。
「コーヒー。」

あぁ、また自分は。

こんな時にすら口下手で何も言えない自分を恨みながら単語を吐き出す。

それを聞いた綱吉がふっと柔らかく笑った気がした。

「あぁ、豆切れてるから明日買ってくるって、獄寺くんが言ってたよ。」
勉強の合間に飲んでいたのだろう、道理で減りが早いとザンザスは無言で空き瓶を棚に戻す。
そしてテーブルの上に、コーヒーとは違う飲み物がゆらゆらと湯気を立ち上らせている事に気付いた。
緑がかったそれは、よくスクアーロが飲んでいる緑茶と呼ばれる飲み物。
じぃっと見ていると、湯飲みを指差し「欲しいの?」と首を傾げられた。
「ん。」
返事と同時に、一つ離れた椅子に座って頬杖をつく。
トントンと指で机を叩けば、綱吉ははいはいと笑って空の湯飲みにお茶を注ぐ。
湯飲みを掴むと、陶器で出来ているそれはすぐに熱を伝えたのかとても熱かった。そのまま湯飲みに口を付けると、想像以上の温度に反射的に唇を離す。
「あっ、大丈夫、熱かった!?」
綱吉は湯飲みを置いて唇を押さえるザンザスの顔を、心配そうに覗き込んだ。
目が合った途端、ザンザスの胸が柄にもなくきゅんと締め付けられる。
何時間ぶりだろう、こんなに間近で見つめられたのは。
綱吉が自分の事を考えてくれると実感するのは。

「熱いんだよ…。」

唇も、顔も、胸も。


「待ってて、今水持って…。」
「いい。」

離れようとする綱吉の手を、思わず掴んで引き寄せる。

「行くな。」

それだけを言って目を見つめていると、綱吉は心配そうに視線を泳がせていたが観念したようにザンザスの隣に腰を下ろした。
椅子一つ分近付けた事が嬉しくなるが、顔には出さずに舌を見せる。

「赤くなってる。やっぱり水飲んだ方がいいね。持ってくるよ。」
「…すまない。」
自然に出た謝罪の言葉に、綱吉も、言った本人であるザンザスも目を丸くした。
「ツナヨシ、すまない。今も、この前も。」
「ん、いいよ、待っててね!」
柔らかい笑顔で額に軽くキスを落とされ、思わず赤面して目を反らす。



その先のテーブルの上に、自分の買い置きしていたプリンの空容器を見つけたザンザスが烈火のごとく怒り、水を持ってきた綱吉と壮大な喧嘩の2ラウンドを始めるのは、また別の話。



**********


遅くなってしまって申し訳ないです…!!
ケンカ、という事ですれ違いな二人を書いてみました。
結局プリン争奪戦が始まるのです。

ツナは大してケンカしたとは思ってません。
何か知らないけどザンザス怒ってるなぁぐらいの認識です(笑)


080229:ぐすく

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