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「…はぁ」

何度目かわからない溜め息をついて窓硝子越しに外を見る。
いつも開け放っている窓は長く降り続いている雨のせいで閉めっぱなしだ。


(何で約束してる日に限って降るんだよ…)

納得出来ない様に容赦なく降り続く雨を睨んだ。


「ったく…、こうジメジメされると何もする気が起きねェな…。」

「わふぅ…。」


窓縁に座り呟いた言葉に律儀に相棒が槌を返してくれた。
やはり湿気に鬱陶しさを感じるのは人も犬も一緒なんだろう。

そんな事を考えていると、自分の座っている窓縁にそろりとラピードが近づいて来た。


(…お見通しってか)


ふ、と口角が緩んむ。
この賢い人間のような犬は、自分が落ち込んだりすると敏感に感じ取るらしい。
何も言わず傍にいてくれる。

そんなラピードの頬をそっと手の平で撫でた。


「…ありがとな」

「クゥン…」

あてがった手の平に頬を擦り寄せ、最後に鼻先で押された。
まるで「元気を出せ」とでも言われた感じがする。
少し湿った鼻が暖かかった。


「…うし、いっちょ腹ァくくるか!」

「ワン!」


そう言って立ち上がると、連なってラピードも立ち上がった。


(アイツに…フレンに、会いたい…。)

会って、謝らなければならない事がある。
聞かないといけない事がある。

言いたかった…事がある。


ずっとずっとずっと、


これだけは。

親友であるアイツに言えなかった。
いや、<親友>だからこそ、言えなかったんだ。





今となっては随分昔の事の様に感じるが、前にアイツに『好きだ』と言われた事があった。

アイツの言う『好き』とオレの抱える『それ』は違うって事ぐらいわかってた。
わかっていた、のに、
少しでも期待してしまった自分がいた。

そんな自分を許せなかった。


アイツの純粋な想いを、


汚してしまった気がした。



この気持ちが親友として好いてくれているアイツへの裏切りの行為だと、
持っていてはいけない想いなのだと、

気付いていた。
だからオレはこの気持ちに蓋をした。


これ以上、アイツをオレの身勝手な想いで汚したくなかった。




だから、オレは。










した

(自分の気持ちに、蓋をしたんだ)







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