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「……」

「だっ…大丈夫ですよユーリ!!元気出して下さい!!ねっ!」


ふわふわと目の前で桃色が揺れ動く。

全然気にする事ないです!とか、焦りながら言われてもなぁ…。
溜め息を吐くと桃色がビクッと跳ねた。


「…ゆ、ユーリ」


泣きそうなその声に、若干焦り慌てて顔を上げる。


「悪かった、気にしてねぇよ」


そう、別にエステルが悪い訳でもない。
しいて言うならばオレの星座とか生まれた日が悪いんだ。
パラパラとエステルの持って来た雑誌を捲りながら呟いた。


「…諦めろって事かねぇ」

「そんな!!駄目ですよ諦めるなんて!!」


絶対上手くいきます、エステルはそう言ってくれるがオレは全く上手くいくような気がしない。(今月雑誌の占いとかで恋愛運最低だったし)


だって…なぁ?



小さい頃は大概男子と遊んでいた。男っぽい事がカッコイイと思ってたからだ。
ずっとそれでいいと思ってた。(現に一人称は未だ『オレ』のままだ)


だけど最近…その、何というか、気になる人が出来て、今までの自分が無性に恥ずかしくなって…可愛くなりたいと思うようになった。


友人であるエステル達にそれを告白すると、皆喜んで相談に乗ってくれた。(リタに関しては激しく驚いてたし、ジュディは何か残念がってたけど)

エステルはといえば、そういう話が好きならしく、嬉しそうに笑いながら占いとかおまじないとかの情報を提供してくれている。


流石に…今までの男っぽい振る舞いが全て抜ける訳じゃないけど、好きな人には少しでも可愛く見られたいって奴の気持ちが凄くわかる。
それに加えて…


「何でオレとあいつ、相性最悪なんだ…」

仕方ないけど!仕方ないけどさ!!
占いに馬鹿にされてるみたいでちょっとムカつくんだよ!!




「端から見ればお似合いのカップルなのだけれどね」




声のした方に顔を向けると此方に歩いてくるジュディと目が合った。
…相変わらずモデルみたいな歩き方と体型だな。(顔もだけど)


「…そんなん別に嬉しくねぇよ」


だってそう見えたって、実際付き合ってる訳じゃないし。

そう言って下を向くと、あら、と弾んだ声を返された。


「珍しく凹んでるのね、占いごときで」

「ご、ごとき…ですか…」

「ジュディ、そんな良い笑顔でキツイ事言うなよ…エステルが傷つくから」


エステルがそういう乙女チックなものを信じる反面、ジュディは幾分現実主義だ。(オレも半信半疑だけど)


「そうは言うけど、占いなんかに頼ったって…自分が動かなきゃ何も変わらないし、始まらないのよ?」

「それは…まぁ、そうだけど…」


ジュディの言ってる事は正論だ。
結局最終的に、上手くいくもいかないも自分しだいなのだ。


「でも、」

「え?」

「何となく恋愛運いい時に告白したくないか?」



オレがそう言うと、二人共一瞬固まった後くすくすと笑いだした。


「…何だよ」

「ふふ、あなたがそんな事言うなんて思ってなかったから」

「今ユーリが凄く可愛く見えました!!」

「ほう…いつもは可愛くないって?」

「ちっ違いま!すそういう意味じゃないです!!」

「ま、別にいいけどな」


そう言って笑いながら立ち上がった。


「サンキュ、ジュディ。エステルも」

「あら、行くのね」

「ああ 勇気貰ったしな」

「頑張って下さいユーリ!!絶対大丈夫です!」

「報告楽しみにしてるわ」

二人に背を向け、後ろから声援を贈られながら教室を出た。向かうはアイツが居るであろう生徒会室。

時間的にもそろそろ総会が終わる頃合いだと思う。調度良く会えるといいんだけどな…。

そんな事を考えながら歩く、オレの足取りは何故だか軽かった。


なあ、お前の隣を狙っても…いいか?





( きっと夢中にさせるから! )










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