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冗談から始まる××
「それで菜々子が――…」


俺の横で珍しくよく喋る月森。
堂島家での話、都会にいた頃の話、家族の話。

他愛のないことだが尽きることのない話題は、彼の声にのって次々と俺の耳を滑っていく。
それがひどく快い。

今思うと出会った当初の月森はどこか近寄り難いというか、表面的なものしか見せてくれていなかった気がする。
河原での殴り合いで親友になって以来(いや、よく考えるとそれより少し前からだった気もするのだが)、月森もだが俺も少し変わったのだ。

そう考えつつ、それが友情以外の感情を抱き始めているからではないかと頭の片隅では気付いていた。
けれどその感情が何なのか、気付いてからしばらく経つ今でも分からずにいる。

分からないのだが、答えを深く追求しようとは思わない。
それはやはり、この状態を心地よく感じているからだろうか。


「──…って陽介、聞いてるか?」

「……悪ィ、あんまし聞いてなかった」


まあいいけど、と言いながらも何だか寂しそうな月森の横顔に、内心まずったと後悔する。


「なぁ、月森」

「何だ?」

「膝枕して」


ここは冗談でもかまして空気を軽くしようと放った一言。
すぐに、なんちゃって、と言うはずが、俺より先に月森が口を開いた。


「別に、…いいけど」


まさかの返答と照れたように顔を背け僅かに頬に朱が差した月森に、言った俺の方が戸惑ってしまう。
そんな、だって膝枕なんてダチでしかも男同士がすることじゃねぇし。

けれど、月森の返答を嬉しいと思う気持ちもたしかにあって。
最初は冗談のつもりだったのに何故だろう。
月森の膝枕は心地良くて、けれどその間中ずっと動悸が止まらなくて落ち着かなかった。



××
(君の声が、体温が、こんなに心地良い)
(あぁ、これはもしかして、)



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友達以上な感じで。


あきゅろす。
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